薬害肝炎訴訟九州弁護団
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平成14年11月に結成された「薬害C型肝炎訴訟九州弁護団」は、福岡・大分・熊本・佐賀・長崎・宮崎・沖縄・愛媛の各弁護士会に所属する弁護士総勢60名で構成されます。
薬害HIV訴訟やハンセン病訴訟の弁護団、医療問題を専門分野とする弁護士で、九州・沖縄・山口地区を担当しています。
九州は平成15年4月18日、東京・大阪に続いて3番目に福岡地裁に薬害肝炎訴訟提訴。
そして21年6月10日、福岡地裁において和解協議が行われ、原告17名の和解が成立しました(第3民事部6名、第2民事部7名、第6民事部4名)。
九州原告383名のうち383名の和解が成立しています(2024年7月現在)。和解成立した383名のうち45名(11.7%)は、医療記録(カルテ等)がないものの、医師の証言で和解成立した方です。
このように、カルテがない方でも治療当時の医師の記憶や治療方針によって立証できる場合には、薬害被害者として認定されており、原告数の1割強はカルテがなかった方になります。
なおカルテの有無・医師の証言の有無にかかわらず、全員救済すべきという誤った主張が見受けられます。
薬害肝炎訴訟とは、あくまで資料・証言等の何らかの根拠に基づいて「薬害被害者」と認定できる方の裁判です。感染原因・資料の有無にかかわらず救済すべきということであれば、それは「薬害C型肝炎訴訟」ではなく、「C型肝炎訴訟」になってしまい、国も製薬企業も受け入れる余地がないからです。
2002年8月、全国の医療問題・集団訴訟に取り組む弁護士が結集して、フィブリノゲンによるC型肝炎感染被害にどのように取り組むのか、討議しました。
その際、薬害被害者として認定できる方は裁判を提起し、薬害被害者として認定できない方の救済としては患者会と一緒に治療体制の整備(当時のインターフェロン治療の助成など)を求めていくことを決定したものになります。
カルテのない薬害C型肝炎の救済の現状
2002年から活動をしている薬害肝炎原告団弁護団は、大阪・福岡・東京・名古屋・仙台の5判決をてこに2008年1月薬害肝炎救済法による解決を勝ち取り、さらに全肝炎患者を対象とした肝炎対策基本法を制定させました。
前者に基づき、現在も追加提訴・和解が継続しています。
後者に基づき、再発防止の検証、治療体制整備をはかる恒久対策が議論されています。
なお最近の報道で、「肝炎対策基本法でも、感染原因が不明だと治療費助成が受けられない」と誤った情報を散見します。しかし「肝炎対策基本法」は、国・地方公共団体の責務として、全肝炎患者を対象とした肝炎対策の整備を求めるもの。したがって感染原因を問わず治療費助成が受けられます。
また、薬害肝炎全国弁護団は、カルテのない薬害C型肝炎患者も積極的に救済してきました。例えば、われわれ九州弁護団は、2003年4月の初提訴からカルテのない薬害肝炎被害者を提訴し、2006年8月の福岡地裁判決では、4名のカルテのない原告が勝訴しています。
薬害肝炎全国弁護団のカルテのない被害者の救済状況は下記の通りです。
1 問題の所在
「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(以下、「薬害肝炎救済法」という)によって給付金を受けるためには、特定の血液製剤によってC型肝炎に感染したことが要件となっており、そのことを証明する確定判決又は和解調書などが必要とされている。
すなわち、給付金を受けるためには特定の血液製剤によってC型肝炎に感染したことが証明されなければならない。
一般のC型肝炎感染者数は200万人と推計され、このうち薬害による感染者数は加害企業によるものであるが約1万人以上と推計されている。それゆえ、薬害肝炎救済法は、他原因によるものではなく薬害による感染であることの立証を要求しているのである。
しかしながら、薬害肝炎救済法は、2008年1月に成立したところ、薬害肝炎の被害者は1964年から1994年までの間に特定の血液製剤を受けてC型肝炎に感染したものであり、薬害肝炎救済法が成立した時点ですでに14年から44年が経過していた。
医療記録は保管期間が5年(診療報酬明細書は3年)とされており、薬害肝炎被害者の大半は医療記録が現存しない状態にある。
こうして、薬害肝炎被害者の多くは、医療記録のみによる特定の血液製剤の投与によってC型肝炎に感染したことの立証が極めて困難な状況となっている。それゆえ、一人でも多く薬害被害者を救済するためには、医療記録のみにとらわれない立証も必要である。
2 薬害肝炎全国弁護団の活動
薬害肝炎全国弁護団は、前記問題の所在に適切に対応するため、以下のような取り組みを行ってきた。
- 薬害肝炎救済法が成立する前から医療記録が存在しない被害者についても提訴を行い、医師の尋問等により特定の血液製剤の投与がなされたことを立証した。
- 薬害肝炎救済法が成立する際に、国と協議し、投与当時に作成された医療記録だけではなく、「それと同等の証明力を有する証拠」によってもこれを立証できることを国に認めさせた。具体的には、医師、看護師、薬剤師等による投与事実の証明、ウイルスの遺伝子型又は本人、家族等による記録、証言等を国は考慮することとなった。
- 薬害肝炎救済法が成立後、医療記録が存在しない患者についても、医師や看護師の証言や本人や家族の証明書など投与の証明となりうる証拠を集めて特定の血液製剤によるC型肝炎の感染についての立証活動を行っている。
上記の活動の結果、薬害肝炎全国弁護団では、医療記録が存在しない被害者について、これまで全国で196名を提訴し、うち107名について和解が成立している。
薬害肝炎全国弁護団は、薬害肝炎の被害者を一人でも多く救済するために医療記録の存在しない場合においても上記の活動を引き続き行う所存である。