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遺言書保管制度の概要Q&A

遺言書保管制度が令和2年(2020年)7月10日から施行されています。相続でも遺言書の取り扱いについては法律相談も多いテーマなので解説いたします。

自筆証書遺言は自宅(仏壇や金庫、タンス)で保管されていることが多いのが実情です。ですが、遺言書が紛失したり、場合によっては相続人や関係者によって廃棄・改ざんが行われる恐れもあります。
そこで「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年7月6日成立、同月13日に公布)によって、公的機関である法務局が遺言書を保管する制度を創設したものです。
法務局で保管することによって、全国一律のサービスが提供される、プライバシーを確保できるなどのメリットがあります。

Q法務局はどのように保管してくれるのですか。

A原本を保管し、画像データ化して保管してくれます(法務局における遺言書の保管等に関する法律6条1項、7条1項)。

Q法務局という第三者が保管すると、かえって他の相続人が悪用しませんか。

A法務局が相続人の一人に遺言書の証明書を交付したり、遺言書を閲覧させた場合、法務局は他の相続人にも遺言書が保管されていることを通知します。

Q私が生きている間は遺言書を見られたくありません。法務局に預けると生きている間に子供たちに知られてかえって紛争になりませんか。

Aあなた(遺言者)が生存中は、遺言者以外の人は、遺言書の閲覧をできませんので大丈夫です。

Q法務局に預けた後、自分が死亡する前に「やっぱりやめた」と撤回することはできますか。

Aはい。あなた(遺言者)は、法務局に保管してもらった遺言書について、保管の申請を撤回することが可能です(同法6条、8条)。

申請を撤回すると、法務局は、あなた(遺言者)に遺言書を返還するとともに、遺言書に係る情報を消去することになります(同法8条4項)。

Q法務局に預けるメリットは何ですか。

A自宅に保管していると、遺言書が紛失したり隠匿されたりするケースも実務的に発生しています。公的機関が保管することによって、紛失・隠匿を回避するだけでなく遺言書の存在の把握が容易になります。その結果、遺言者の最終意思を実現し、相続手続きを円滑に進めることになります。

なお法務局に保管されている遺言書については、通常要求される遺言書の検認(民法1004条1項)も不要です。

Q遺言書の保管申請、遺言書の閲覧請求、証明書の交付などにはお金がかかりますか。

Aはい、遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求をするには、法律上、手数料を納める必要があります(法務局における遺言書の保管等に関する法律12条)。

手数料については、物価の状況のほか、事務に関する実費を考慮して政令で定めるとされ、令和2年4月20日現在、下記の金額になります。

申請・請求の種別 申請・請求者 手数料
遺言書の保管の申請 遺言者 一件につき3900円
遺言書の閲覧の請求(モニター) 遺言者
関係相続人等
一回につき1400円
遺言書の閲覧の請求(原本) 遺言者
関係相続人等
一回につき1700円
遺言書情報証明書の交付請求 関係相続人等 一通につき1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 関係相続人等 一通につき800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 遺言者
関係相続人等
1700円
遺言書保管申請の撤回 遺言者 0円(手数料不要)

Q法務局に自筆証書遺言を預ける具体的な手順を教えてください。

A自筆証書遺言を作成して、保管してもらう法務局を決めましょう。住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局になります。

申請書を作成して、保管申請の予約をします。

予約した日時に、あなた本人(遺言者本人)が法務局に行く必要があります。

遺言書・申請書・添付書類(本籍の記載のある住民票の写し・3か月以内)・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)・手数料3900円をもっていきましょう。

Q自分は足に麻痺があり高齢なので外出できません。法務局の人が自宅に来てくれませんか。また付添人がいたら出頭できそうですが大丈夫ですか。

A法務局の人(遺言書保管官)が出張して預かりに来る制度はありません。ですから、法務局に本人が出頭する必要があります。なお付添人が連れ添っても大丈夫です。

Q法務局で自筆証書遺言の審査・チェックはしてくれるのですか。

A法務局(遺言書保管所)では、遺言の内容についての審査・確認はしてくれません。ですから自筆証書遺言の法的な要件を満たしていないとせっかく事前に預けたのに、後々紛争が残ることもあります。弁護士など専門家に相談した上で自筆証書遺言を作成しておく必要は、従来通りですのでご注意ください。

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