行政書士と非弁活動
行政書士が交通事故の無料相談を行うとの報道を目にしました。相談窓口が広がることは一見すると消費者にプラスになりそうです。しかし大きな落とし穴があります。
行政書士法は、その1条の2において次のように定めています。
「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。」
さらに1条の3において、行政書士の業務を定めています。
「行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。
1 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続について代理すること。
2 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
3 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。」
要するに、行政書士の主たる業務は、免許等の申請書類の作成・提出、内容証明の作成・提出、契約書の作成などに限られます。報道された交通事故相談は、1条の3 3項の「書類の作成について相談に応ずること」の一環と思われます。
しかしながら、行政書士が書類の作成を超え示談交渉を行うことは許されません。弁護士法を脱法する非弁活動になります。例えば、過失相殺が問題となるケース、相手方との示談交渉が必要なケース、保険会社の提示について疑問があるケースなどで、行政書士はほとんど対応できないでしょう。そもそも法律の専門家ではない行政書士が、十分かつ的確な法的アドバイスを行えるか、疑問なしとしません。
つい先日も、「行政書士に○円払って解決を約束してくれたが、書面を出すだけで何もしてくれない」という相談を受けました。東京の行政書士がインターネットで全国から客をつのり、電話口で「私が何とかします。あきらめずにねばり強く交渉していきましょう」などと説明を行ったケースです。しかも、相談者とは面談もせず、委任契約書も締結していないのです。結局、内容証明提出だけで10万円近い金額を支払わせて、その後はなしのつぶてという状況でした。
知り合いの行政書士に真摯で真面目な方もおられます。しかし違法な業務を行う同業者に対して、行政書士連合会は監督機能を全く発揮できていません。弁護士会が行政書士の非弁活動には目を光らせていますが、今後も同様の被害は多発しそうです。
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