医療事故情報第47回報告書が公表、小児用ベッドからの転落事故を分析
日本医療機能評価機構が2016年12月26日、医療事故情報収集等事業第47回報告書を公表しました。
報告書の対象期間は2016年7月から9月。
個別のテーマとしては、「腫瘍用薬に関連した事例」がまず取り上げられました。
腫瘍用薬は主に複数の薬剤を使用すること、患者の体表面積や体重によって投与量が決定されること、当日の検査値から減量や投与中止の判断など薬剤の取り扱いに注意が必要なこと、患者の身体・健康への影響が大きいことから、医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例も多数報告されています。
そこで、医療事故情報報告書でも、事例を1年間継続的に収集することにして、第45回報告書から連続して分析がされているものです。
また、「歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例」も取り上げられました。
誤飲・誤嚥ケースは30例報告されており、異物としては、補綴送致、歯冠修復物、歯科用医療機器、歯科材料、歯など多岐に渡っています。
年歴には70歳代及び80歳代が9件に達しており、事例の背景・要因には患者の高齢もうかがえ、患者の状態の把握・治療部位の状態の評価が、再発防止には必要とされています。
さらに、「小児用ベッドからの転落に関連した事例」も特集されました。
2011年1月から2016年9月までに報告件数は4件ですが、急性硬膜下血腫、側頭部の陥没、外傷性くも膜下出血など重大な結果が生じています。
小児用ベッドには患者の転落防止のため四方を囲むサークル型の柵がついています。平均身長が85cm~110cmである2~5歳の幼児が、容易にベッド柵を越えられないように、柵の高さは80cm程度に設計されています。
ところが、ベッド柵はスライド式で、2段階または3段階の高さで固定することが可能であるため、上段以外で固定されている場合は、ベッドからの転落の危険性が高まるものです。
裁判例においても、入院中の3歳児がベッドから転落死したケースについて、宇都宮地裁平成6年9月28日判決は、看護師がベッドの安全柵を完全にセットしたか否か確認することなく病室を離れた点に注意義務違反を認めて医療機関の責任を認めています。
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