ワーファリンの代わりにラシックスなど外観の類似した薬剤の取り違えが4例、医療安全情報118号
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」118号・2016年9月号を公表しました。
今回は、アンプルや包装の色が類似していたことが薬剤取り違えの一つの要因となり、患者に誤った薬剤を投与した事例が4件報告されています。
第45回報告書の「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられた内容になります。
1つ目の事例は、医師が薬剤の色の思い込みによって違う薬剤を投与したケースです。
手術中、患者が吐き気・気分不快感を訴えたため、術者の医師が「プリンペランiv」と口頭で指示を出します。その際、看護師が他の処置を行っていたため、別の医師が、「プリンペラン=茶色のアンプル」という自分の認識のまま、茶色の薬剤を取り出し、投与してしまいました。その後、患者の血圧は60~80mmHg台となったため、エフェドリンを投与するに至りました。
手術終了後、看護師が確認したところ、プリンペランの空アンプルでなく、使用していないはずのペルジピンの空アンプルがあったため発覚したものです。
2つ目の事例は、薬剤師が包装の色で薬剤を誤ったというケースです。
外来受診し、保険薬局で内服薬を受け取って帰宅した患者が、受診後より食欲不振、倦怠感が強くなり、歩行困難となってしまいました。2日後、症状改善せず入院せざるを得ませんでしたが、入院後、「ワーファリン錠1mg3錠 1日1回夕食後」の薬袋に、ラシックス錠40mgが入っていることが発覚しました。
薬剤師は、調剤の際、同じ棚の赤いPTP包装を見てワーファリン錠だと思い込み、鑑査でも間違いに気付かないまま患者に渡していたものです。
ワーファリンは経口抗凝固剤で血栓塞栓症の治療に使用しますが、ラシックスは利尿降圧剤で高血圧症・うっ血性心不全などに使用するものです。
薬剤を取り違えた背景・要因としては、アンプルや包装の色が類似していたというもの。いずれも、薬剤名を確認していなかったために発生しています。
総合評価部会は「アンプルや包装の色が類似した薬剤が存在することを認識すること」、そして「アンプルや包装の色で判断せず、薬剤を手に取った際に薬剤名を確認する手順を決め、遵守すること」を提言しています。
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