前医療機関からの食種情報の確認不足による医療事故が3例、医療安全情報117号
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」117号・2016年8月号を公表しました。
今回は、他施設からの食種の情報を確認しなかったため、患者に適さない食事を提供した事例が3例報告されています。
第26回報告書の「個別のテーマの検討状況」で取り上げた内容になります。
1つ目の事例は、医師が入院時の食事を指示する際、診療情報提供書に記載された食種を確認しないまま、「常食」と入力してしまったケースです。看護師も患者の咀嚼・嚥下状態を観察しませんでした。
そのため15分後、患者がむせて、SpO2は80%に低下。その後、米飯を大量に吸引してSpO297%に改善しましたが、その後、看護師が転入前の食種を確認すると、前医では「全粥・粗刻み食」を提供していたことが分かったというものです。
2つ目の事例は、医師が入院時の食事を指示する際、前施設からの食種に関する情報がなかったため、とりあえず「常食」をオーダ。看護師が夕食のセッティングをして、食事の摂取を3口ほど見守り退室しました。その後、食事摂取状況の確認のため訪室すると、患者がベッド上でぐったりしており、呼名に反応せず、口腔内にはミカンや米飯などが多量にあったというものです。
実は、入院時に患者が持参した看護サマリには「全粥・軟菜・刻み食」と記載されていたにもかかわらず、看護師が確認していなかったものでした。
いずれも医師ないし看護師が慎重に対応し、他施設からの診療情報提供書や看護サマリーの確認を徹底していれば避けられた事案です。
2つの事例は幸いに患者の体調は回復したようですが、死亡等の重大な結果になっていれば、注意義務違反のそしりは免れなかったでしょう。
高齢者や入院患者の誤嚥による医療事故は、医療機関の責任が認められることも少なくありませんから、基本に戻り徹底した確認が求められています。
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