ハンセン病問題について議論、バチカン、そして草津・奄美
ハンセン病の患者・元患者への差別解消に向けた国際シンポジウムが6月9日、バチカン(ローマ法王庁)で開催しました。バチカンでハンセン病に特化したシンポジウムが開催されるのは初めてになります。
キリスト教の聖書にはハンセン病に類似した皮膚の病気の記述があります。そのため中世から強制隔離などの差別や偏見の対象となったと指摘されています。
そして第266代のフランシスコ法王が2013年6月、聖職者の過度な出世主義を戒める演説の際に、「出世主義はハンセン病」と病名を差別的に使用したため、抗議を受けたことをきっかけに、シンポジウム開催を決めたという経緯があります。
一方、日本ハンセン病学会も6月7日、群馬県草津町で開幕。医師や研究者、療養所職員ら約120人が参加し、ハンセン病の歴史や、療養所入所者の心理等について発表して意見交換しました。
日本ハンセン病学会は、ハンセン病に関する研究目的で1927年に設立。ハンセン病医学・医療の向上、さらに患者の福祉の向上や人権を尊重した医療の確立に向け活動している団体です。今年の草津の学会は89回目の開催になりました。
「栗生楽泉園の職員の小林さんは「差別に苦しんだ事実は同じでも、権利回復のために活動する人と静かに生きようとする人がいる」と話し、今後の療養所の役割として、▽一般の人たちにハンセン病問題を正しく理解する契機を与えること▽元患者が最後まで安心して暮らせる、その人らしい生活の保障−−を挙げた。
この日は日本ハンセン病学会賞を受賞した埼玉県立大講師の山口乃生子さんによる記念講演や、医師の塚田修さんによる特別講演もあった。8日は研究者ら9人の発表が予定されている。(6月8日付け毎日新聞)
先月5月12日には市民の立場からハンセン病問題を考える「ハンセン病市民学会第12回総会」が奄美で開催され、入所者が減り続ける奄美和光園の将来構想についてシンポジウムが開催されたばかり。
ハンセン病違憲国賠訴訟原告団弁護団も、5月25日、塩崎厚生労働大臣に対して統一要求書を提出して、大島青松園の船舶問題などを取り上げました。
ハンセン病問題の差別偏見の解消、そして隔離政策の過ちの是正のためには、それぞれの立場から多角的にハンセン病問題を取り上げ続けていくことが何より求められています。その実践が今も続いています。
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