厚生労働省が肝炎対策基本指針を改正へ、肝硬変・肝癌減少を目標明記
厚生労働省が、肝炎対策基本指針の平成28年改正案をまとめました。
平成28年3月17日開催の肝炎対策推進協議会(第17回)にて議論されたものです。
目次
肝炎対策基本指針とは
肝炎対策基本指針とは、肝炎対策基本法に基づいて2011年5月16日に作成されました。
肝炎対策基本法9条が「厚生労働大臣は、肝炎対策の総合的な推進を図るため、肝炎対策の推進に関する基本的な指針(以下「肝炎対策基本指針」という。)を策定しなければらない。」と定めているものです。
「肝炎患者を早期に発見し、肝炎患者が安心して治療を受けられる社会を構築するため、国、地方公共団体が取り組むべき方向性を示すことにより、肝炎対策のより一層の推進を図ること」を目的にしています。
そして肝炎対策基本法9条5項が、少なくとも5年ごとに基本指針に検討を加えて、必要があるときは変更しなければならないと定めていることを受けた改正です。
肝炎対策基本指針の平成28年改正の方向性
平成28年改正の基本的方向性は2本。
まず、国としての肝炎対策の全体的な施策目標として、肝硬変、肝がんへの移行者を減らすこと(肝がん罹患率の減少)を目標とする旨を明記します。
また、国は都道府県に対し、各地域の実情をもとに、肝炎対策に係る計画及び目標を設定するよう促します。
そのほか、検査の促進についても、一層推進していくことなども掲げています。
厚生労働省は22日までに、肝がん患者の減少を目指す肝炎対策基本指針の改正案をまとめた。自治体と連携し、肝炎ウイルス検査の普及啓発や患者の支援を担う人材の育成を掲げた。5月にも告示する方針。
改正案では、国や自治体がウイルス検査で陽性となった人に受診を促し、早期治療で肝がんの罹患(りかん)率(2011年時点で人口10万人当たり推計34人)を「できるだけ減少させる」とした。
保健師や看護師、産業医らの中から「肝炎医療コーディネーター」を育成することも盛り込んだ。(3月22日付け日経新聞)
肝炎対策基本指針の主な改正点
それでは具体的な平成28年改正のポイントを項目ごとにまとめておきましょう。
「予防」については、B型肝炎ワクチンの定期接種の実施を図ることを追記しました。
「肝炎検査」については、職域での肝炎ウイルス検査について地方公共団体や拠点病院等と連携し、研究班の成果等も踏まえ、医療保険者・事業主等関係者の理解を得ながらその促進に取り組むことを強調しています。
「医療供給体制」については、検査陽性者の受診勧奨、フォローアップの取組を一層推進することを強調したほか、働きながら適切な肝炎医療を受けることができるよう事業主への周知を進めるなど、肝炎患者の就労支援への取組強化にふれています。
「医薬品の研究開発」では、肝炎治療に係る最近の動向を踏まえ、特にB型肝炎、肝硬変の治療に係る医薬品の開発等に係る研究を促進することを明記しています。
「啓発・人権尊重」としては、これまでの研究成果を元に、肝炎患者等に対する偏見や差別の被害の防止に向けた具体的な方策を検討し、取組を進めることを追記しました。
その他の「重要事項」としては、肝炎から進行した肝硬変・肝がん患者に対する更なる支援の在り方について、従前の調査研究の結果、新たな治療法の開発状況その他の医療の状況、肝炎医療費助成や重症化予防事業などの施策の実施状況等を踏まえ、検討を進めることを追記してます。