高校3年生自死問題で「再調査の必要性なし」、福岡県の再調査委員会が答申へ
福岡市内私立高校3年生が2013年11月、マンションから飛び降りて自死しました。
学校は第三者委員会を設置して、第三者委員会は1年間の調査の結果、14件のいじめを認定。
その上で、第三者委員会は2015年3月、日常的な暴力に絶望して自死したものとして、「いじめと自死との因果関係は明白」とする報告書を提出していました。
私は遺族推薦の第三者委員会の委員として調査にかかわりましたが、生徒が高校2年生時には既に自殺未遂を起こすなどSOSを発していたにもかかわらず、10人近い複数の生徒が日常的にいじめを行っていたことなどを認定しました。
今回福岡県は、「いじめによる重大事態再調査委員会」に再調査の必要性を諮問して、同委員会は再調査の必要性はないと判断しました。
「いじめによる重大事態再調査委員会」は昨年5月、小川知事から再調査の必要性を諮問され、三者委員の報告書の分析や学校への聞き取り調査をした。その結果、事実関係が名各なこと、学校側が再発防止に取り組んでいること、保護者から再調査の要請がないことーなどを確認したという。
答申には再発防止策として、教職員が転勤しても情報を共有できる取り組みや職場環境の整備についても触れる予定。(3月23日付け朝日新聞)
いじめ防止対策推進法30条2項・31条2項は、学校の調査(第三者委員会による調査を含む)に対して再調査をできることを定めていますが、曖昧な定め方でありわかりにくいものになっています。
第31条 学校法人(私立学校法第3条に規定する学校法人をいう)が設置する学校は、第28条第1項各号に掲げる場合には、重大事態が発生した旨を、当該学校を所轄する都道府県知事に報告しなければならない。
2 前項の規定による報告を受けた都道府県知事は、当該報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、附属機関を設けて調査を行う等の方法により、第28条第1項の規定による調査の結果について調査を行うことができる。
福岡県は、31条2項に基づく再調査の必要性の有無について調べたということですが、新聞報道によると、学校側から聞き取り調査を行うなど、一部再調査に近い作業を行ったことがうかがえます。
一方、遺族側に対しては、答申をした事実や学校からの聞き取り調査の実施について、事前に十分に情報提供されていなかったようです。
「再調査の必要性の有無」を判断するにあたっては、自死事案のような重大案件では遺族の意向も大きなファクターであることは間違いありません。
本件は、学校側も遺族側も、第三者委員会の報告書を受け止めて争いがないため、「再調査の必要性なし」という当然の結論に達しました。
ですが事案によっては、今回のような福岡県の措置は、手続的透明性に欠けるという批判が出る余地もありそうです。
学校側がまとめた報告書の妥当性を審議していた小川洋知事の諮問機関「県いじめによる重大事態再調査委員会」は3月22日、県庁で会合を開き、「再調査の必要性はない」とする答申内容を決めた。
会合後に田辺委員長が内容を公表した。理由として①報告書は学校側が設置した第三者委員会がまとめ「いじめと自殺との因果関係は明白」としており、事実関係が名各②いじめ防止教育の徹底など学校の再発防止策は妥当③遺族との間に事実関係の争いがないーの3点を挙げた。(3月23日付け西日本新聞)
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