化血研に薬害HIV訴訟原告団弁護団が抗議書を提出、「和解に踏み切った私たちに対する決定的な裏切り」
40年に渡って不正な方法で血液製剤を製造していた「化学及血清療法研究所」。
12製品26品目について、国の承認書に記載していないヘパリンや添加剤を使用したり、承諾書に記載された行程を一部改変・省略するなどしていたものです。
問題の重要性に鑑み、厚生労働省も立入検査に入っています。
薬害エイズ訴訟の被告企業だった化血研は1996年、被害者に謝罪して和解に応じました。
ところがこの謝罪の裏側で、不正な製造を会社ぐるみで行っていたことになります。
薬害HIV原告団弁護団は化血研に対して抗議書を提出し、「事の実態、その原因、責任の所在を詳かにするとともに、 このような不正が今後繰り返されることのないための方針、対策について、私たち に明示し、説明すること」を強く求めました。
貴所は、長年にわたり、血友病をはじめとする血液疾患等の治療に資する各種血 漿分画製剤の製造販売に携わり、その過程において、血液凝固因子製剤による深刻 悲惨なHIV感染被害を生じさせています。 私たちは、この被害について、国および貴所を含む製薬企業5社を相手取って民事訴訟を提起し、1996年には和解が成立しました。この和解において、国及び貴所を含む製薬企業5社は、責任を認めて謝罪するとともに薬害の再発防止を確約しています。その後、私たちはこの貴所の反省と再発防止の確約を信頼し、貴所を私たちのための医療を支える貴重な国内メーカーの一つとして位置づけ、その歩みを強い注意と関心、そして期待とともに見守ってまいりました。
しかるに、時あたかも和解から満20周年の節目を来春に控え、貴所製造販売による血液製剤のうち12製品26品目について、「承認書に記載していないヘパリンを添加」「承認書に記載された量と異なる添加剤を使用」「承認書に記載された工程を一部改変・省略」など、承認書と異なる製造方法により製造されていたことが判明しました。
上述のごとく貴所の動きを注視しつづけていた私たちは、予想もしなかった悪質な内容に、大きな衝撃を受けました。その後、貴所において内部調査が行なわれたものの厚生労働省から客観性に欠け ると判断され、第三者調査委員会が設置、このたび、その結果がまとめられました。その実態は、私たちの怒りと憤慨の念を一層増大させるものでありました。とりわけ、承認書と異なる製造、あるいは、その実状を隠蔽するための虚偽の製 造記録の作成などが二十年以上続いていたと見られることは、既述の提訴・和解の 経過の最中から、貴所が不当な行為を開始・継続していたことを意味します。これは、大きな決断とともに貴所との和解に踏み切った私たちに対する決定的な裏切りであります。
今回判明した違反行為は、当該血液製剤の使用者に重大な健康被害をもたらすものではないと判断されており、言うまでもなく、そうでなければ深刻極まりない事態です。しかしながら、仮に健康被害を伴わないとしてさえも、貴所の全所的・構造的な不備に基づくこれら違反行為は、「薬害エイズ」を惹き起こすに至った医薬品製造者の責任と同根同質のものであり、和解「確認書」に背く行為と言わざるを得ません。
また、承認書と異なる物質を加え、異なる製造工程をとることは、医薬品の有効性と安全性を確保するために設けられた承認制度の根幹を揺るがす行為であり、国民の信頼を裏切るものであることは言うまでもありません。
以上私たちは、激しい怒りと憤慨の念とともに強く抗議をするとともに、貴所が第三者調査委員会による調査結果をも踏まえ改めて迅速・適切な対処を実行し、その経緯を私たちに明示することを強く求めます。
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