古賀克重法律事務所ブログ

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胃がん結果を見落とし告知せず男性患者が死亡、大垣市民病院が1500万円で示談

大垣市民病院が胃がん結果見落として1500万円を賠償

 岐阜県大垣市の大垣市民病院が2015年8月31日、医師が患者の胃癌の検査結果を見落としたためにがんの転移・進行して死亡したとして、遺族との間で1500万円の賠償金を支払う和解にいたりました。

 男性患者(70代)が2012年12月、大垣市民病院の消化器内科を受診し、胃カメラの検査で胃癌と診断されました。
 ところが主治医が検査結果を見落とし、患者に告知することも、治療開始されませんでした。

 患者が2014年4月、再度受診し検査した時には、肝臓に癌が転移して手術不可能な状態に進行しており、2014年9月に死亡したものです。

大垣市民病院

 見落としによって約1年4か月ほど治療の機会を失った結果、治療方法も制限されてしまったケースです。
 癌患者の医療過誤の場合、仮に過失があったとしても、癌の進行程度・余命・5年生存率などが争点になります。そのため、本件も損害額は1500万円にとどまったものと思われます。また過失を認めて謝罪しても、結果にはさほど影響なかったとして賠償金の支払いに応じないというケースもあります。

 損害額としては裁判例もふまえたものである一方、病院側が「当初の段階で手術をしていれば根治が望める状態だった」と認めていることからするとやや低い印象も持ちます。

同種事案の示談例

 私が依頼を受けて担当した同種事案は、胃内視鏡・生検も実施して明確に腺癌の所見があったにもかかわらず、やはり主治医が見落としたため、2年後に受診した際には未分化細胞癌(ステージⅣ)まで進行してしまっていたというケースでした。

 医療調査受任後、損害賠償請求を行いました。
 「明白な注意義務違反行為」と「stage進展という損害」との間に高度の蓋然性が認められる事案であり、患者に生じた全損害を賠償する責任があると強く主張し、3000万円で訴訟前の示談が成立しました。

 癌見落とし事件は、患者の状態・年齢など極めて個別性が強くなります。
 そして癌の種類・ステージ・見落としの期間などについて個別・具体的に検討を加えた上、主張内容に反映していく必要があります。
 前記の通り、そもそも病院側が見落としを認めても、結果に影響はなかったとして賠償に応じないケースも少なからずあります。
 損害額は参考にすぎず一般化はできませんので注意してください。

 なお大垣市民病院は昨年8月にも検査結果を見落としているということで、再発防止の体制整備が急務といえそうです。

市民病院によると、男性は12年12月、貧血などがあったため、かかりつけ医の紹介で市民病院消化器内科を受診。その後、胃カメラの検査で胃がんと診断されたが、担当した60歳代の男性医師が検査結果を見落とし、患者本人に結果が伝わらなかった。

本来は、医師が電子カルテで検査結果を確認し、その後の受診の際、患者に伝える仕組みだが、男性医師は確認を怠り、患者に次回の受診を求めることもしなかった。患者の男性に「かかりつけ医に検査結果を伝える」と言ったが、かかりつけ医にも連絡していなかった。

患者の男性は14年4月、貧血や足のむくみを訴えて再び受診。検査の結果、肝臓にがんが転移し、手術不可能なほど進行していたことが判明。翌月から4度にわたり入院し、同年9月に死亡した。当初の段階で手術をしていれば根治が望める状態だったという。

記者会見した藤本佳則副院長は「検査したらこちら側が責任を持って結果を本人に伝えるのが基本。院内で徹底する必要がある」と話した。市民病院では、昨年8月にも検査結果の見落としによる死亡事故があった。(8月31日付け中日新聞)

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投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。