「子宮頸がんワクチン事件」、世界的なワクチンビジネスの背景に迫る1冊
先日紹介した「子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち」に続いて取り上げるのは「子宮頸がんワクチン事件」(斎藤貴男著・集英社)です。
この1冊も先日の薬害オンブズパースンタイアップグループ福岡の会合で話題となりまとめて購入したもの。
ジャーナリストの斎藤貴男氏がHPVワクチンの背景に迫っていくルポで読み応えがあります。
日本だけの問題とされていたこのワクチンの副反応が実は世界的に発生しています。例えばデンマークでの発症率は日本の実に3倍になっています。
そしてワクチンビジネスの最大の特徴は、市場の大部分が予防接種という名前の「公共事業」であるということ。
製薬企業などが医師・患者・広告代理店・新聞社などを巻き込み、政治、特に与党議員にどのようにアプローチしていったかなど、巨大なワクチン産業の実態が生々しく読み手に迫ってきます。
最悪なのは何もなかったことにしてしまう姿勢です。福島第一原子力発電所の事故でもあらわな政財官界の習い性が、HPVワクチンを推進している関係者の方々にも時おり見受けられるのが気になります(同書「あとがき」)
なお第4章では、HPVワクチン接種勧奨の再開をためらう必要はないとする牛田享宏・愛知医科大学教授、再開には慎重であるべきとする池田修一・信州大学医学部教授のイタンビューを取り上げています。
さらに第7章では製薬企業2社からの回答についても触れるなど、多角的に検討を加えています。
「子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち」が被害実態に光を当てた著書だとすると、「子宮頸がんワクチン事件」はワクチンビジネスの問題点、そして日本のを重層的に掘り下げた1冊。
この2冊に目を通すと子宮頸がんワクチンを巡る問題の全体像が概ね把握できるでしょう。
いったい、このワクチンは何物だろう。予防接種の副反応をめぐる事件や騒動(予防接種禍)を日本国民は幾度も経験してきたが、今回のHPVワクチンは、過去のいずれのケースともまったく違う経過をたどっている。導入までの経緯も背景も大きく異なる。
容易には把握できないが、だからといって政府任せにしておいて済む問題ではない。禍は多くの場合、青春の入り口に立ったばかりの少女たちに降りかかっている。せめて彼女たちの救済と、解決のためのよすがになれないものかと願いながら、事態の全体像を迫った(同書「はじめに」)
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