少年院法が66年ぶりに全面改正、少年鑑別所法も新たに施行
目次
少年院法改正の経緯
新少年院法及び少年鑑別所法が平成27年6月1日から施行されました。平成26年6月4日に参議院で可決され、同年6月11日に公布されていたもの。
旧少年院法は、昭和24年施行以来、60年以上も抜本的な見直しがなされていませんでした。
そのため在院者の権利義務関係が明確でない、職員の権限に関する規定が少ないなど問題点を抱えていました。
そこに平成21年4月、広島少年院において一連の不適切な処遇事案が発覚して社会問題化。
法務大臣による広島少年院視察に続き、平成22年1月からは「少年矯正を考える有識者会議」が開催されました。
有識者会議は岩井宣子教授(専修大学法科大学院)を座長に、「少年法」の編者者でもある廣瀬健二教授(立教大学大学院法務研究科教授)、人気漫画「家裁の人」の原作者である毛利甚八氏なども委員を務めていました。
15回の会議を経て取りまとめた有識者会議の提言を受け、全面的な少年院法改正に至ったものになります。
少年鑑別所法が独立
今回の全面法改正のポイントは以下のとおりです。
まず少年鑑別所について「独立した法律」が制定されました。
少年鑑別所については少年を巡る法律関係において重要な役割をになっているにもかかわらず、今までは少年院法の中に規定されているだけでした。
この点、少年審判前の心身鑑別をする少年に対する処遇と少年審判によって処分を受けた少年に対する処遇は、理念的にも内容的にも明らかに異なります。
したがって今回独立した法律として少年鑑別所法を制定したことは当然ということもいえるでしょう。
再非行防止に向けた取組
次に、「再非行防止に向けた取組の充実」が図られました。
具体的には、少年院法による「矯正教育の基本的制度の法定化」と「社会復帰支援の実施」、そして少年鑑別所法による「少年鑑別所の機能の強化」になります。
「矯正教育の基本的制度の法定化」としては、年齢区分の撤廃による少年院の種類の見直しが行われ(少年院法4条)、矯正教育の目的・内容・方法の明確化(少年院法23条から29条)が図られました。
「社会復帰支援の実施」としては、保護観察所との連携の下、帰住先の確保と就労支援の実施が行われます(少年院法44条)。また出院者や保護者からの相談に応じることが出来る制度も導入されます(少年院法146条)。
適切な処遇の実施
また、「適切な処遇の実施」も図られました。
少年の権利義務関係・職員の権限を明確化するとともに、不服申立制度を整備するものです。
例えば、面会については(少年院法91条以下)、少年院は1月に2回以上(少年院法95条2項)、少年鑑別所は1日1回以上の機会が設けられます。
また、手紙の発受についてはも、少年院では、相手方が在院者の矯正教育の適切な実施に支障を生ずるおそれがある等の理由がある場合を除き、基本的に許されます(少年院法98条)。
少年鑑別所では、基本的に手紙のやり取りができる相手方に関する制限はありません。
さらに、少年院では、改善更生又は円滑な社会復帰に資すると認めた場合において、電話等により通信をすることができるようになります(少年院法106条)>
不服申立制度としては2つの制度の導入
1つは「救済の申出制度」です。法務大臣に対する申出となり、必要に応じて措置の取消・変更、再発防止のための措置が執られます(少年院法120条から132条)。
法務大臣に対して直接申し出ることを法律に定めた意義は大きいといえそうです。
なお出院者にも認められました(121条)。
2つは「苦情の申出制度」です。自分の受けた処遇や鑑別について、少年院長・少年鑑別所長や監査官に対して、書面又は口頭で苦情の申出を行うことができます。
さらに、社会的批判を受ける事件が起きたことをふまえ、「社会に開かれた施設運営の推進」が図られました。
いわゆる施設運営の透明性を確保していこうというものです。
例えば、視察委員会が設置されるとともに(少年院法8条から11条)、地域住民の参観も行われるようになります。第三者による視点を意識させることによって透明性を図ろうというものです。
特に視察委員会は、在院者との面談について権限を持つことになり、院長は視察委員による面談への協力が求められます(10条)。いわば第三者機関としての役割が求められているといえます。
改正が俎上に上ってからかなり時間をかけて議論してきた今回の改正。
抽象的な枠組みの設定だけに終わらず、いかに現場で法改正・新法律の趣旨を実現できるかがポイントになってくるでしょう。
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