「医薬品の安全性と法~薬事法学のすすめ」が出版、薬害オンブズパースン会議の実践から
「医薬品の安全性と法~薬事法学のすすめ」(エイデル研究所、編著鈴木利廣・水口真美・関口正人)が出版されました。
1997年に設立した、医薬品の民間監視を目的とするNGO「薬害オンブズパースン会議」の17年にわたる活動の実践から生まれた1冊です。
編著者の鈴木利廣弁護士から献本を頂きましたのでざっと目を通させて頂きました。
「薬事法学」という言葉は聞き慣れない言葉ですが、医薬品にかかわる課題を統計的にとらえ直して、今後の実践に役立てていこうという狙いがあります。
具体的には、薬事法学の7つの原則、すなわち、「予防原則」「リスク最小化原則」「利益相反原則」などを提唱しつつ(14頁)、薬害オンブズパースンの活動を通じた課題を取り上げていきます。
昨年は、高血圧治療薬ディオバンの論文不正問題など医薬品に関する問題が吹き出た1年でした。ただ単発的な新聞記事だけではなかなか背景事情まで理解しにくいのが実情でしょう。
その点、この本は、「企業のマーケティング戦略と監視」、「臨床研究の法と倫理」など昨今の製薬企業を取り巻く新しい問題についても言及しており、現代的課題を理解するための手頃の参考書にもなるでしょう(その意味では医療問題を取り扱うメディア関係者にも手に取って欲しい1冊です)。
また末尾(348頁)には、「医薬品被害の救済」として鈴木弁護士が、繰り返される薬害と薬害訴訟の歴史をひもときつつ、現代型訴訟としての薬害訴訟の運動論に言及しており(355頁)、研究者はもとより学生、新しい集団訴訟に取り組む弁護士にも参考になると思います。
私自身もじっくりとさらに熟読してみようと思っています。
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