ハンセン病の向こう側、厚生労働省が中学生向けパンフレットを公開
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中学生向けパンフレット「ハンセン病の向こう側」を発刊
厚生労働省は、ハンセン病に対する差別・偏見を解消するため、「わたしたちにできること~ハンセン病を知り、差別や偏見をなくそう~」というパンフレットを作成しています。
対象は中学生です。平成15年1月31日から厚生労働省が全国の中学校・教育委員会に直送しています。
平成20年度から改定され生徒用に「ハンセン病の向こう側」、指導用に「ハンセン病問題を正しく伝えるために」というパンフレットになっています。
1月21日に厚生労働省のサイトにもアップされました。
パンフレットのわかりやすい内容
このパンフレットには、ハンセン病違憲国賠訴訟の経緯、弁護団による勝訴の旗だし、原告団の官邸での小泉総理との面談写真なども掲載されています。
「らい予防法」は平成8年(1996年)にようやく廃止されました。平成10年(1998年)には入所者らによって熊本地裁に国のハンセン病政策の転換が遅れたことなどの責任を問う「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」が提起されました。続いて東京、岡山でも提訴が行われました。
平成13年(2001年)、熊本地裁で原告勝訴の判決が下されました。国はハンセン病問題は早期に全面解決する必要があると判断し、原告の主張を受け入れ、控訴をしませんでした。
その後、国は入所者たちにおわびをし、新たに補償を行う法律を作り、入所者や社会復帰者たちの名誉回復、社会復帰支援及びハンセン病問題の啓発活動等に取り組んでいます。
そしてハンセン病違憲国賠訴訟の後も様々な問題が残っていて、解決していく必要があることについても言及されています。
熊本地裁の判決に対し、国は控訴・断念を決めるとともに、内閣総理大臣談話を発表し、ハンセン病問題の早期解決に取り組む決意を表明しました。
しかし判決後も、熊本県で入所者に対するホテル宿泊拒否事件が起きるなど、残念ながら入所者や社会復帰者、その家族に対する偏見や差別には根強いものがあります。
そのため、療養所の外で暮らすことに不安を感じ、安心して退所することができないという人もいます。
ハンセン病療養所訪問の必要性
このようにパンフレット自体は、とてもコンパクトにわかりやすい内容になっていますが、学校側が生徒にきちんと指導するためには、教師自身がやはり療養所を一度は訪問することが必要でしょう。
2014年、福岡県の公立小学校の教諭が小学6年生に対し、ハンセン病について誤った授業を行っていたことが発覚しています。
男性教諭が「ハンセン病は骨が溶ける病気」、「風邪と一緒で菌によってうつる」などと講義していました。
ハンセン病療養所を訪問したり、元患者の話を直接聞いたことが一度でもあれば、このような間違った授業は行わずに済んだことでしょう。
・ハンセン病「体溶ける」と虚偽の授業、福岡県教育委員会が謝罪(14/6/6)
先日、最高裁もハンセン病隔離法廷の調査のために療養所を訪問したほか、熊本県議会も1月15日、熊本の療養所・菊池恵楓園を初視察しています。
・ハンセン病隔離法廷を最高裁が検証へ、50年を経て異例の調査(14/10/19)
私も全国13のハンセン病療養所のうち、12療養所を訪問しましたが、頭で考えるよりも肌で感じることがとても多かったと思います。
そのように現地を知った上であれば、このパンフレットはよりうまく利用できるでしょう。