厳しすぎる肝機能障害による手帳交付、厚労省も基準見直しを
薬害肝炎全国原告団および日肝協は、国に対して、肝障害に関する身体障害者福祉法上の身体障害者認定基準を緩和するように求め続けています。
肝機能障害が手帳の対象になった経緯は下記の通りです。
まず薬害肝炎全国原告団弁護団と厚労大臣との協議において、厚労大臣が平成20年9月9日、「肝機能障害を身体障害に位置づけることを検討する」と回答しました。
その後、平成20年10月27日、肝機能障害に関する検討会が設置されて、7回の議論を経て、「肝機能障害が重症化し、治療による症状の改善が見込めず回復困難になっているものについては身体障害の対象となる」との報告書を取りまとめました。
こうして肝機能障害に対する身体障害者手帳の交付は、平成22年4月1日から施行されているものです。
対象は、Child-Pugh分類(チャイルド・ピュー分類)によって判定され、3か月以上グレードCに該当する患者が対象になります。
手帳が交付されると、障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス等の対象となるほか、各種税制優遇の適用、鉄道・航空旅客運賃等の割引措置を受けられます。
チャイルドピュー・グレードC
各項目の合計点数が10~15点
肝性脳症(1点なし、2点軽度、3点昏睡)
腹水(1点なし、2点軽度、3点中程度以上)
血清アルブミン(1点(>3.5)、2点(2.8-3.5)、3点(<2.8)) PT時間(1点(>70%)、2点(40-70)、3点(<40%))
総ビリルビン値(1点(<2)、2点(2,0-3.0)、3点(>3))
ところがこの国の基準が極めて厳しいため、身体障害者手帳を取得できる患者数は極めて少ないのが現状なのです。
チャイルドピュー・グレードCは、上記の項目の合計点数が10~15点の場合を言いますが、患者団体によると「肝硬変の末期というべきであって一般的に余命は半年。こんな状態の患者で手帳をもらっても意味がないし、もらおうとする人も少ない」と厳しく批判しています。
そのため、薬害肝炎全国原告団及び患者団体が改善を求め続けていますが、厚労省は重い腰を上げてきませんでした。
本年度の薬害肝炎全国原告団と厚労大臣との定期協議においても、この問題を取りあげて認定基準の速やかな緩和を求めていく予定です。
慢性肝炎患者に対する支援は進んできましたが、肝硬変・肝癌患者に対する支援はまだまだ足りません。
身体障害者手帳の基準緩和も早期実現が求められています。
重い肝機能障害を対象とした身体障害者手帳の取得者が、2010年4月の交付開始以降、厚生労働省の想定数の1~2割にとどまることが分かった。
患者団体は「基準が厳しすぎる」と見直しを求めており、同省は、今月から研究班による実態調査を始め、基準見直しに乗り出す。担当の同省障害保健福祉部は「調査結果を受け、早急に対応したい」としている。(6月9日読売新聞)
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