薬害肝炎解決6周年集会、到達点と課題を整理し一丸となって
薬害肝炎全国原告団と国との間の基本合意から早くも6年を迎えました。
2014年(平成26年)1月25日、全国から100名を越える原告・弁護団が名古屋に集い、解決6周年記念集会を開催しました。
集会では名古屋原告が「被害救済」「恒久対策」「再発防止」の3分野について、この1年の進捗状況を報告しました。
目次
◆被害救済
昨年の5周年記念集会の時点の全国原告数は2010人。うち和解に至った原告の数は1839名(91.5%)でした。
現在の全国原告数は2065人、和解に至った原告の数は1847人(94.6%)に達しました。
この1年間で新たに55人が原告に加わるとともに、新たに106人が和解したことになります。
この点、国との基本合意に基づいて成立した薬害肝炎救済法は、当初、2013年(平成25年)1月15日までの期限でした。
しかし、薬害肝炎全国原告団が働きかけた結果、2018年(平成30年)1月15日まで期限延長したものです。
法延長が実現していなければ、この1年間で提訴した55名の方は、薬害肝炎被害者であるにもかかわらず、救済されないところでした。
その意味でも、薬害肝炎全国原告団弁護団としての活動を続けていくことの大切さを感じました。
今後も薬害肝炎全国原告団弁護団は、国・厚生労働省に対して働きかけを継続し、1人でも多くの被害者を救済していく所存です。
◆再発防止
再発防止とは、薬害肝炎原告のような被害者、同じような薬害を二度と発生させないための取組みです。
国との基本合意に基づき設置された「薬害肝炎検証会議」は、2010年(平成22年)4月、「最終提言」をとりまとめました。
この最終提言は、薬害を二度と繰り返さないために医薬品行政を監視評価する第三者組織を設置すべきと述べています。
その後、歴代の厚生労働大臣は「平成24年通常国会には法案を提出するよう進めていく」と約束したものの、法案提出に至りませんでした。
超党派の国会議員連盟設立の機運も2012年(平成24年)11月の衆議院解散によって立ち消えになります。
しかしその後の粘り強い原告団から働きかけの結果、2013年(平成25年)4月2日には、超党派の国会議員連盟が設立されるに至りました。
法案提出には至りませんでしたが、2013年(平成25年)8月2日の大臣協議では、田村厚生労働大臣から、今後も、引き続き、議員連盟とも密に連絡を取って再スタートしていきたいとの言葉を引き出しました。
そして、2013年(平成25年)11月1日の衆議院厚生労働委員会では、薬事法改正法案に、政府が各薬害被害者団体の意見を重く受け止めて、独立性が確保される第三者組織の設置について速やかに検討を行うことを求める附帯決議がなされました。
このような薬害被害者の悲願ともいうべき「第三者組織」の実現とともに、薬害教育の充実と薬害研究資料館の設立は、再発防止のための活動の大きな柱の一つです。
薬害を根絶するためには、繰り返されてきた薬害の歴史や被害の実態について、薬事行政関係者・医療関係者はもちろん、広く国民に理解してもらうことが大切。
薬害肝炎検証会議の最終提言も、「すべての国民に対する薬害教育を推進し、薬害に関する資料の収集・公開等を恒常的に行う仕組み(いわゆる薬害研究資料館など)を設立すべき」との意見を出しています。
最終提言を受け、2010年(平成22年)7月に設置された「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」には原告も委員として参加して検討を続けてきました。
そして、2013年(平成25年)に入り、厚生労働省の予算措置に基づき、被害者団体が保有している薬害に関する資料を把握して整理する事業が始まりました。
現在は、法政大学の金准教授を中心とする研究チームが、薬害被害者団体を訪問するなど精力的に調査しているところです。
今後は調査結果を踏まえ、資料の分類・整理・保管の方法のマニュアルを作成の上、資料整理と目録作りを進めるくとともに、被害者の生の声を後世に伝えるため被害者インタビュー映像の作成も予定されています。
その意味で、2013年(平成25年)は薬害研究資料館の設立実現に向けて大きく前進した1年だったということができるでしょう。
◆恒久対策
恒久対策については、まず身体障害者手帳について進展がありました。
薬害肝炎全国原告団弁護団が、肝機能障害に対する身体障害者手帳の交付を強く求めたことから、2010年(平成22年)4月から、肝臓機能障害を理由として身体障害者手帳も交付されるようになっていました。
しかしその認定基準が余りに厳しいため、病状が進んだ肝硬変患者でも、身体障害者2級の認定を受けられない状態だったのです。
2級の認定基準を満たしていなくても、非代償性肝硬変になれば、日常生活が大きく制限されます。このような場合にも認定されないのでは、身体障害者手帳を交付する枠組みが存在しても、絵に描いた餅になりかねません。
2013年(平成25年)8月の大臣協議で、薬害肝炎全国原告団弁護団は、身体障害者認定基準の緩和を強く求めました。
その結果、田村厚生労働大臣から、「平成25年度に出される八橋研究班の最終報告を踏まえて、でき得る限り早急に対応したい」との回答を引き出すことができました。
また、「障害年金」については、2013年(平成25年)8月から、肝疾患による認定基準を議論するための専門家会合が4回にわたって開催されています。
八橋弘医師らが肝臓病患者に対して行ったアンケート調査では、肝疾患患者のうち1/3以上が、「生活が大変苦しい」、「やや苦しい」と回答。症状が進行した肝炎患者の生活状況の厳しさが明白になりました。
そのため、薬害肝炎全国原告団弁護団は、肝疾患による障害年金の認定基準について議論する専門家会合の委員に対して、意見書を複数回提出し、適正な認定基準への改訂を繰り返し訴えました。
ついに2013年(平成25年)11月15日に開かれた第4回目の専門家会合では、これまでより緩やかな認定基準が提示されたところです。
さらに、医療費助成の拡充を求めて、全国B型肝炎訴訟原告団弁護団、日本肝臓病疾患患者団体協議会とともに、いわゆる「3団体行動」も継続しました。
例えば、2013年(平成25年)10月ころから地方議会への請願を全国各地で開始。11月20日、21日には国会請願と院内集会を行いました。
◆全国原告団一丸となって
以上のように、「被害救済」「再発防止」「恒久対策」のいずれの分野においても、着実に成果を得てきましたが、他方で、課題が残されていることも事実です。
薬害肝炎全国原告団は2002年8月以来、一致団結して、国に対して解決を求め、世論に理解を求め、裁判所の説得に力を注ぎました。
5地裁の判決が責任製剤・責任時期で分かれたり、国が線引き解決による幕引きを狙ったり、厳しい判断に迫られることも少なくありませんでしたが、その都度、全国原告団の結束を第一に要求の実現を求め、勝ち取って来ました。
このように他の集団訴訟と比較しても遜色のない、むしろ抜きん出ているといって過言でない「全国原告団の結束の強さ」がこれまでの解決の原動力でした。
全国原告団代表の山口美智子さんが締めくくったように、われわれ全国弁護団も全国原告団に寄り添いつつ、今後も一致団結して課題克服のために頑張っていきたいと思います。