弁護士任官推進九州ブロック大会、裁判官から見た一流の弁護士とは
2013弁護士任官推進九州ブロック大会が12月14日、福岡県弁護士会館にて開催されました。
この日は昼から九州弁護士連合会の理事会も行われ、理事会に引き続き大会にも参加しました。
この大会は日弁連・九弁連・福岡県弁護士会が主催。九州では2005年、2008年、2011年に続いて4回目になります。
「弁護士任官」、つまり、弁護士から裁判官への任官者を増やしていこうという大会です。
目次
九弁連からの弁護士任官の現状
現行の弁護士任官制度による最初の任官者が誕生したのは2002年(平成14年)です。
それ以降、九弁連においては、平成16年、平成18年、平成23年、平成24年と4名の任官者を輩出してます。
なおこの人数は、弁護士を廃業してフルタイムで裁判官に従事する「常勤任官」の数になります。
簡易裁判所の民事調停官や家庭裁判所の家事調停官として、弁護士を続けながら、週1日~2日程度の勤務を行う「非常勤裁判官」は、7名ほどいます。
この非常勤裁判官については、弁護士を継続しつつキャリアを詰めるということもあり人気で、募集枠を大きく越える応募があるようです。
パネルディスカッション「挑戦、そして成長」
福岡県弁護士会から簡易裁判所の民事調停官を務める弁護士の経験報告に続いて、「挑戦、そして成長」と題するパネルディスカッションが行われました。
パネラーは、弁護士任官した3名の現役裁判官。任官して6年を経たK裁判官(39期)、1年半を経たS裁判官(51期)、2年半を経たY裁判官(54期)です。
それぞれどうして弁護士になったのか、裁判官になったきっかけ、現在の仕事内容などについて発言を頂きました。
裁判官から見た一流の弁護士とは?
シンポジウムの後半では、各任官裁判官から見た弁護士像についても話題が及びました。
長い任官歴があり地裁の所長を務めるK裁判官は、次のように述べました。
「一流の弁護士には3つの要素が必要だと思います。1点目は、目的を設定してスケジュールを整理し、戦術的に落とし込んでいく戦略家であること。2点目は、組織をまとめるリーダーでありマネージャーであること。そして当然ながら法律実務家としての実務遂行能力を備えていることです」とした上で、「物事に動じない胆力や質の高いサービスを提供する心構えも必要だと思います」。
また、S裁判官は、「以前、修習生のころ、検事正に良き法曹は?と問いかけたことがあります。その時、検事正は、『記録を良く読むことに尽きる』と言われました。検察官や裁判官は記録に始まり記録に終わるということだと思いますが、一方、弁護士について言うと、いかに依頼者から良く聞き取りをするか。そして少しでも有利な事実を引き出すかということになると思います。そしてそのためには人柄も大事であり、依頼者の信頼をいかに勝ち取るかという点も大事になってくるのだと思います」とコメントしました。
最後に、Y裁判官は、次のような見解を示しました。
「自分のかつてのボス弁は依頼者から絶大な信頼を得ていました。正直、弁護士会会長・日弁連会長を歴任した人ですから肩書きが影響していると失礼なことを思っていましたが、違うんですね。とにかく依頼者に向き合い、じっくりと話しを聞く。弁護士としてコミュニケーション能力が何よりも大事だということを学びました」。
「裁判官の立場に立ってみると、依頼者の話を良く聞いて、事案の落としどころを持っている弁護士は、訴訟の最初に提示する。そうすると裁判所としてもそれに乗っていくことになる。逆に相手方弁護士はそれを崩さないといけないから手強い弁護士、ということになるのだと思います」と述べました。
それぞれの立場・経験から非常に参考になる話しだったと思います。
最後にK裁判官は、「優れた裁判官に求められるもの」として、「徹底的に謙虚であり、徹底的に真面目であること」とも指摘しました。
人の話を徹底的に聞くこと、そして物事に正面から勝負すること。
このことはまた弁護士にも求められている素養だと受け止めました。
弁護士任官自体は今後も急激には増えていくのは難しいと思いますが、この日のシンポジウムのように、任官した裁判官の経験を弁護士側に落とし込んでいくことも、また大事なことだと考えさせられる一日でした。