C型肝炎治療で糖尿病を発症させ、2500万円の賠償が認められた事案
テラプレビル、そしてシメプレビルと次々に最新治療が開発されているC型肝炎治療。
一方で、適応や副作用について、医療機関が患者に対して十分に説明しないまま、漫然とインターフェロン治療を勧めてトラブルになる例も見受けられます。
肝機能数値が正常な無症候性キャリアのC型肝炎患者に対して、肝臓専門医でない内科医が、ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法を行った結果、患者に1型糖尿病を発症させた事案において、2500万円の訴訟上の和解が成立しています(医療事故情報センターニュース309号)。
本件は2006年に治療開始した事案ですが、同年発行の「慢性肝炎の治療ガイドライン」(日本肝臓学会)によれば、「ALT正常な無症候性キャリアに対する治療適応は定まっていない」とされていました。
しかも添付文書上、治療期間は「48週」とされているにもかかわらず、52週に渡って投与がなされていたようです。
この医師は、肝臓専門医ではないにもかかわらず、その点を患者に対して積極的に説明しないばかりか、「うちはインターフェロン治療に関しては最先端だから心配はいらない」とまで説明して、インターフェロン治療を行っていたものでした。
C型肝炎ウイルスの型やウイルス量は不明ですが、そもそも当時、ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法は、1型かつ高ウイルス量の慢性肝炎のみ保険適用でしたから、キャリア患者に対して保険適用したのかなど、様々な問題点がうかがわれます。
患者はウイルスを排除できたものの、1型糖尿病を発症して、以後、毎日のインシュリン注射による血糖値コントロールを要する状態を後遺したものです。
薬害肝炎弁護団として医療講演会を開催したり、最新情報に接する機会が多いのですが、日本における肝炎患者数が多いことから簡単に考えている専門外の医師が多いのも事実。
インターフェロン治療等にふみきる場合には、患者会などから情報を入手した上、それぞれの地域の肝臓専門医に診てもらうことがいかに大事か・・改めて考えさせられる医療過誤事案といえるでしょう。
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