産科医療補償制度の救済が一部拡大へ、求められるさらなる制度改善
今年の医療弁護団・研究会の全国交流集会は今日から2日間に渡り金沢で開催されます。
患者側に立って医療問題を扱う弁護士が研鑽のために交流している歴史ある集会。今年で35回目を数えます。
ちょうど1年前、昨年の第34回・医療問題弁護団・研究会の全国交流集会は、福岡で久しぶりに行われ、全国から160名の弁護士が参加。
メインテーマとしては、「産科医療補償制度」を取りあげました。
産科医療補償制度とは、2009年に創設され、「出生体重が2000グラム以上かつ在胎週数33週以上で出生した児」であって、「身体障害者等級1級または2級に相当する重度脳性麻痺が発生」という条件を満たせば、医療機関・医師の過失の有無を問わず、3000万円が支給されるものです。
具体的には、準備一時金として600万円と子が20歳になるまで補償分割金として2400万円が毎年分割(年120万円×20回)にて支払われます。
また、原因分析委員会が、診療録に記載されている情報から、医学的な観点から原因分析を行うことも大きな特徴。
原因分析報告書では、医療水準として、「優れている」「一般的である」などから、「医学的妥当性がない」「基準から逸脱している」など様々な表現で指摘がなされます。
昨年の交流集会では、九州山口の患者側弁護士が集う「九州山口医療問題研究会」所属の若手弁護士が中心となって、その「原因分析報告書」を読み込んで準備。その上で、「分娩監視上の問題点」、「子宮収縮薬の使用事例」、「ACOG基準と産科医療補償制度」、「臍帯脱出における脳性麻痺の再発防止」などについて報告していました。
あれから1年が経過し、ついに産科医療補償制度の条件が緩和される見込みになりました。
従前は、「出生体重が2000グラム以上かつ在胎週数33週以上」とされていた条件が、「出生体重が1400グラム以上かつ在胎週数31週以上」になるものです。
つまり、より早産で低体重の子の救済へ門戸が広がることになります。
日本医療機能評価機構の運営委員会が11月13日、見直し案をまとめたもので、厚生労働省の部会に報告され、早ければ2015年から導入される見通しです。
今回の見直しで対象者数は年間約140人増加すると言われています。
しかしながら年間120億円から140億円の掛け金余剰が出ており、「身体障害1級または2級」という要件の見直しも必要ではないでしょうか。
また補償申請できる時期については、子の満5歳の誕生日までとされています。情報が十分に行き渡っていないことから救済洩れ事案も指摘されています。その意味で申請期限を5歳の誕生日までに区切ることには疑問があります。
産科医療補償制度は、前述の原因分析など専門家の献身的な作業で軌道に乗っていますが、まだまだ被害者の視点からいえば改善の余地がありそうです。
目次