弁護士会執行部としてのIT活用法
福岡県弁護士会の広報誌「月報」の連載コーナー「ITコラム」に、「弁護士会執行部としてのIT活用法」という原稿を投稿しました。
このコーナーは各弁護士の工夫を紹介するもの。
数年に一度執筆依頼がくるのですが、過去には「集団訴訟とIT」などを書いており、振り返ると時代がうかがえて面白いものです(ちなみに「集団訴訟とIT」は、その後、拙著「集団訴訟実務マニュアル」(日本評論社)の「ITを活用する」(16頁)へと発展させました)。
既に陳腐化している内容も含みますが、若干加筆して備忘録的にブログにもアップしておきたいと思います。
目次
資料保存と閲覧
弁護士会執行部(会長・副会長・事務局長)の会議は毎週開催され、配布される資料は膨大です。
また副会長として14委員会を担当していますので、委員会で配布する資料もかなりの分量になります。
昨年までは、委員会毎にファイルを作り綴っていましたが、もはや現実的ではありません。
そこで継続案件の資料は、PDFにし「Dropbox」(ドロップボックス)」で管理するようにしています。ドロップボックスとはいわゆるオンラインストレージサービスです。最近は各委員会でも資料共有のツールとして活用が広がっています。
執行部会議・委員会・常議員会にはタブレット端末(iPadmini)を持ち歩き、非常にストレスなく利用できています。iPadも事務所の打合室で使用していますが、常時持ち歩くには結構重いですし、miniで十分事足りる印象です。
特に弁護士会の会則会規集は、会務に必須です。
弁護士会専用ページからダウンロードして紙ファイルにも綴じ込んでいますがとても重くて持ち歩けません。この点、会則会規もDropboxに保存し、iPadminiで閲覧できるようにして楽になりました。
ちなみにWi-Fi(ワイファイ)は、個人的に、ボタンを押して通信が開始するまでのあの数秒に微妙なストレスを感じます。またいざという時、機動している内に議論が進んで間に合わないこともあります。そこでminiは、「Wi-Fi + Cellularモデル」(LTE対応の通信可能なタイプ)を選択し快適に利用しています。
なお弁護士会館の中の執行部室には、役員1名に1台のパソコンが備え置いてありますが、やや古いモデルであるため、動作は遅く快適とは言い難い状況です。
そのため私は備え置きのパソコン・キーボードは撤去してしまい、会館当番の日(毎週1日は弁護士会館に詰めて23条照会の決済・文書処理・面談者の対応等を行います)には、ウルトラブック(Ultrabook)を持ち込んでWi-Fiにつないで利用しています。
手書きメモ入力
執行部会議は、毎週月曜日14時から18時ころまで行っています。
その際、副会長としての課題が次々に発生します。当初は、執行部用ノート1冊を持ち歩いていましたが、その内、おっくうになってきました。継続的案件もありますが、日々指示・作業する細々したものも多く、ノートではかえって管理しにくいという点もあるからです。
そこで、手書きアプリである「Penultimate(ペンアルティメット)」をダウンロードして、iPadminiで利用しています。
課題をさっと簡潔にメモするには快適です。忘れないように自分宛にメールすることも可能です。10種類の色づかいが可能だったり、消しゴム機能があったりと結構楽しいアプリです。Evernote(エバーノート)と自動連携可能ですので、手書きの備忘録があっという間にエバーノートにも保存されます。
Evernote(エバーノート)
メモ管理用ツールであるエバーノートはかなり初期から利用していますが、今までは私的な備忘録としての使い方が大半でした。
この点、執行部会務としては「Webクリップ」が重宝しています。
パソコンで閲覧し気になったニュースやサイトをクリップすれば、エバーノートに保存することができる機能です。ニュース記事はいずれ閲覧できなくなりますし、個人サイトは内容が変更したりします。
また思い出してアクセスするまで時間がかかったりします。
そんな時クリップして、例えば「弁護士会」という「ノートブック」に保存しておくとなかなか便利です。
また出先での原稿作成やメモにも便利です。「Fastever」という素早く起動して簡単にEvernoteに保存できるアプリをスマートフォンで利用しています。
例えば、先日、日弁連第56回人権擁護大会のプレシンポジウムが開催されたのですが、その内容はFasteverでメモしてブログにアップしました(「労働法制の規制緩和の影響は?」)。以前ですとわざわざパソコンを持ち込んでましたが、スマートフォンでメモできるようになり便利になりました。副次的効果ですが、この日は台風が九州に接近して大雨でしたから、鞄・パソコンを持たずに手ぶらでシンポに行くことができたことも楽でした。
グーグルカレンダー
自分の法律事務所のスケジュール管理は、紙の手帳とグーグルカレンダーを併用し、事務局とのスケジュール共有とバックアップ機能を果たしています。
この点、会長のスケジュール管理にもグーグルカレンダーを提案したところ採用して頂きました。その結果、会長のスケジュールは、弁護士会事務長及び執行部メンバーが共有可能になりました。
そのため、飛び込みの日程(裁判官の転任挨拶や地方自治体の挨拶等)が入った時、まず事務長がグーグルカレンダーで確認して仮アポを入れた上、会長に正式に決済を求めることが可能になりました。
また、委員会中に、会長の日程を知りたい場合(某日のシンポで挨拶が可能か等)、副会長も即座にグーグルカレンダーにアクセスして確認できるため重宝しています。
最後に
ITはまさに弁護士会会務のように、大量の資料と膨大な事務作業を行う分野に効果を発揮することを久しぶりに実感するとともに、その恩恵を味わっている日々です。
もちろん会務の資料の中には、万が一を考えネット空間に保存すべきでないものも多数あります。そこで、委員会毎・テーマ毎に、透明のクリアファイルも用意し、必要最小限の紙資料も挟み込んで利用しています。
このように、「タブレット」、「スマートフォン」、「クリアファイル」という3点セットを抱えて、日々弁護士会会務を行っているところです。
2006年に弁護士会業務事務局長を務めた頃は、ノートパソコンと大量の紙資料や分厚い紙ファイルを持ち歩いていましたので、隔世の感といえるかもしれません。
日々めざましい速度で進化している分野ですので、会務にさらなる工夫ができないか、楽しみながら試していこうと思っているところです。