自由と正義の書評、「少年事件付添人マニュアル(第3版)」
「少年事件付添人マニュアル(第3版)」について、東京弁護士会の須納瀬学先生が、日弁連の機関誌「自由と正義の書評欄(BOOK REVEW)で取りあげて下さいました(2013年9月号)。
鹿児島出身の須納瀬先生は司法修習38期、2009年以来、日弁連の全面的付添人制度実現本部事務局長を務め、全面的付添人制度の実現に尽力されている弁護士です。
本書を網羅的に分析して、福岡県弁護士会子どもの権利委員会のこれまでの取り組みについても言及して下さっています。
本書は私が編集長と関わった思い出の1冊。当時は、少年付添人を行う弁護士はまだ少なく、このような本のニーズがあるのか?という声もありました。
ですが司法制度改革とともに弁護士が増え、国選付添人制度も一部導入されるなど広がりを見せる中、2002年の初版から2013年の3版まで出版が続いてロングセラーになっています。
2版が品切れになった後には、「付添人マニュアルが古本屋で2倍の値段が付いていた!」とある弁護士が報告していましたので、それなりに高い評価を頂いているようです。
一方で最近思うのは付添人のレベルは本当に上がっているのか?ということです。
司法制度改革によって弁護士が大幅に増員しました(1992年に私が合格した時は630名。現在は2000名)。
新人弁護士のレベル低下への危惧が裁判所から漏れ聞こえてきますが、刑事弁護、成年後見、離婚事件、そして付添人・・あらゆる部門において、以前よりも質が落ちたのではないかという話しも聞きます(もちろん全てを鵜呑みにはできず、弁護士の中には、「新人裁判官のレベルも落ちている」という声があることも指摘しておきたいと思います)。
そして付添人に関しては、「少年事件全てに弁護士なんか要らない」というのが、家庭裁判所裁判官や調査官の本音。
須納瀬弁護士が書評末尾で指摘するように、質の高い付添人活動を行うことで、裁判所の信頼を勝ち取ることが必要になります。
本書はそのような活動のヒントとして利用して頂ければと思っています。
福岡県弁護士会は、少年事件における弁護士付添人活動を拡充するための取り組みで全国をリードしてきた。2001年には、身体拘束を受けた少年の事件全件を対象とする当番付添人制度(「全件付添人制度」)を、全国に先駆けて実施した。その取り組みが全国に広がり、全面的国選付添人制度の実現を求める運動につながっている。
福岡県弁護士会子どもの権利委員会は、従来、一部の弁護士が担っていた付添人活動を、より多くの弁護士が担い、しかも、刑事弁護とは異なる少年事件の特質を十分に理解し、質的に高い活動ができるよう、2002年に本書の初版を出版した。その後改訂を重ねて、今回第3版である。同会の付添人活動の高いレベルを反映したマニュアルとなっている・・
・・本来の目的であるマニュアルとしても、充実したものである。Q&A方式で、時系列に沿った付添人活動(第4部)、否認事件(第5部)、ケース研究(第6部)という分類で、付添人活動における基本的な注意点は網羅されており、いずれの解説でも、「少年のパートナー」という視点を貫く記述がなされている・・
・・第8部の書式集は、今回、大幅に増補されいる。観護措置関連の意見書や申立書、被害者傍聴に関する意見書、最終処分に関する意見書(非行事実に争いがあるケース、ないケース)等が、おそらく実際の意見書をベースに掲載されており、単に書式集にとどまらず、内容面についても、意見書作成の視点のヒントを与えてくれるものになっている・・
・・現在、国選付添人制度の対象事件の拡大が具体的なものとなりつつあるが、裁判所の裁量による選任という枠組みは維持されることとなる。その中で、弁護士付添人の選任率を高めていくためには、少年のパートナーとしての質の高い活動を行うことで、裁判所の信頼を勝ち得ることが不可欠である。そのために、本書は、有用な一冊である。
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