古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

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交際相手からのDVも対象へ、改正DV防止法Q&A

改正DV防止法が成立

改正DV防止法が2013年6月26日、国会で成立しました。

いわゆるDV防止法は、正式名称を「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」といい、「配偶者暴力防止法」とも略称されています。

最近は配偶者間だけではなく、交際相手からの深刻なケースが目立っていたことを受け、議員立法として法案が提出されて改正されたものです。

改正DV防止法のポイント

今回の改正のポイントは、DV防止法の対象を広げたことにあります。

つまり、従来の対象は、「事実婚・結婚中・離婚後の配偶者」からの暴力でした。改正法は、「同居中またはかつて同居していた交際相手」にも広げたものです。ただし同居していない、ないし、同居していなかった交際相手は対象ではありません。ですからデートDV(恋愛カップル間における暴力)の被害者の保護という課題も残されています。

2013年7月に公布され、公布の日から起算して6月を経過した日から施行することとされ、具体的には2014年1月3日に施行されました。

改正DV防止法 Q&A

今回の改正のポイントを含め、DV防止法のQ&Aをまとめました。

Q1 どうして今、DV防止法が改正されたのですか?

近年、デートDVと呼ばれる交際相手からの暴力が社会的に問題となっており、被害者やその親族が加害者によって殺害されるという痛ましい事件も生じている中で、特に生活の本拠をともにしている場合の被害者については、現行の法制度による被害者の救済に制約があり、迅速な救済を図ることが難しい実情となっているという認識のもと、被害者や関係団体を中心に、DV防止法の改正による同法の適用対象の拡大を求める声が高まっています。

本法律案は、こうした被害者の声に応え、各党における検討を踏まえ、立案したものになります(平成25年6月25日・衆議院内閣委員会における趣旨説明)。

Q2 DV防止法の改正は初めてですか?

今回の改正は3回目です。ちなみに、前回2回目の改正は、保護命令制度の拡充に重きを置かれていました。例えば、身体的暴力の被害者に限られていたが、生命・身体に対する脅迫行為も保護命令の対象としたことなどです。

Q3 今回の3回目の改正のポイントは?

従来の対象は、事実婚を含む、結婚中ないし離婚後の配偶者からの暴力でした。
この点、改正法は、同居中またはかつて同居していた交際相手にも対象を広げたことが特徴です。

Q4 同居は1週間程度で解消したのですが対象ですか?

同居期間は問われず、同居期間終了後も対象になります。

Q5 どうして「同居」という要件があるのですか?同居していない交際でもDVはあると思いますが?

DV防止法の保護命令の対象を交際相手に拡大するという議論は、実は、DV防止法の制定時から行われていました。「交際相手」一般に広げることについては、次のような課題も指摘されていたためです。

1つめは、配偶者による暴力の場合には類型的に見て外部からの発見・介入が困難であるという事情があるのに対し、広く交際相手からの暴力といった場合にはそのような事情に乏しいのではないかという点です。

2つ目は、「交際」という概念そのものが、法律上の概念としては不明確ではないかという点です。そもそも保護命令制度は、ある者が将来的に他の者を害するおそれがあるということを国家機関が判断し、予防的な観点から個人の行動の自由を刑罰を背景に制限すると、こういう現行法上特別のものですので、そういった不明確な概念に依拠することには慎重であるべきではないかという考えもあるわけです。

従って、保護命令の対象を拡大するにしても、単純に「交際」という概念で外延を区切ることは相当ではなく、何らかの要件を上乗せすることによって配偶者からの暴力と質的に同質なものに限るとともに、その対象となる範囲を明確にする必要があると考えられたためです(平成25年3月21日・参議院内閣委員会・政府答弁)。

Q6 ところでDV防止法の保護命令の内容を教えて下さい

保護命令は5つあります。「2か月の退去命令」、「6か月間の接近禁止命令」、「電話等の禁止命令」、「子への接近禁止命令」、「親族等への接近禁止命令」です(法10条)。
なお、後者3つ(電話、子、親族への各禁止命令)は、「6か月間の接近禁止命令の期間中」に限られます。

Q7 そもそも保護命令に効果はあるのですか?

裁判所が保護命令を出しても、保護命令で相手方を強制的に退去させることはできません(法15条5項)。

とはいえ、保護命令に違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(法29条)。また、裁判所は、保護命令を警察に通知しますから、警察が保護命令に違反した相手方を逮捕することもあります。
以上の意味で効果はあるといえるでしょう。

Q8 子に関する接近禁止命令を申し立てる方法はどのようなものですか?

同居の有無や子の年齢によって変わってきます。
まず申立人と子が同居している場合は、子への接近禁止命令の申立が可能です。但し、子が15歳以上20歳未満であれば、子の同意書が必要ですし、子が20歳以上であれば、「子への接近禁止命令」ではなく、「親族等への接近禁止命令」になります。

次に、子が、相手方と同居していて、申立人と同居していない場合には、子への接近禁止命令は申し立てることはできません。
最後に、子が、申立人とも相手方とも同居していない場合には、「子への接近禁止命令」ではなく、「親族等への接近禁止命令」として申し立てることが可能です(年齢による同意書の有無は、前述と同じです)。

Q9 DVの認知件数や一時保護される人数はどの位でしょうか?

配偶者からのDV事案について、警察の認知数は4万3950件と法律の施行後、最多となっています(平成25年3月21日・参議院内閣委員会)。
また、一時保護される任数は、2010年で4579件、うち日本人女性4203件、外国人女性378件になっています(平成25年6月11日・参議院法務委員会答弁)。

Q10 DV防止法に課題はありませんか?

警察・司法・支援団体などあらゆる場面において、DV防止法の趣旨を周知徹底し、被害者の置かれた状況に寄り添った運用が求められているといえるでしょう。

例えば、DV被害の相談を担っている各地の男女共同参画センターについて、職員の相談体制の問題があります。相談員が非常勤職員で、契約が更新されなければ、継続的な支援が必要な利用者や連携機関との信頼関係が途切れるという点も指摘されています。
内閣府としては、非常勤職員の人材育成・研修を行うとともに、継続的な配置を地方自治体に依頼して、体制の充実を図っていくとのことです(平成25年6月25日・衆議院内閣委員会)。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。