薬害肝炎訴訟 国との基本合意5周年記念集会
薬害肝炎全国原告団・弁護団が2013年1月26日、東京半蔵門にて「国との基本合意5周年記念集会」を開催しました。
全国から200名を超える原告団・弁護団が参加。会場は熱気にあふれていました。
全員一律救済を政治決断した、当時の福田康夫元総理大臣からもメッセージが寄せられました。
薬害肝炎対策基本合意5周年にあたり、記念集会を開催されますことを先ずはお喜び申し上げます。
薬害肝炎全国原告団の皆様方による提訴から約5年かかって、2008年1月15日に厚生労働大臣との間で和解に向けた基本合意書が調印されました。その際、総理官邸で皆様にお会いし、行政の代表としてお詫び申し上げました。本日、国との基本合意5周年記念集会が開催されるとお聞きし、当時のことを改めて感慨深く思い起こしております。
昨年9月、感染被害者の方々の早期・一律救済の要請にお答えするC型肝炎救済特別措置法の改正案が成立しましたが、これも関係者の皆さまの熱意あふれる活動によるものです。
本日に至るまで、原告団・弁護団の皆様方のご苦労は申し上げるまでもなく、ご関係の方々のご尽力に敬意を表するとともに、医薬品行政に携わるものすべてが命の尊さを決して忘れることなく、ふたたびこのような薬害が繰り返されないことを心から願っております。 福田康夫
田村憲久厚生労働大臣からも、次のようなメッセージを頂きました。
薬害肝炎訴訟『国との基本合意5周年記念集会』の開催に当たり、改めてお亡くなりになった患者の方々のご冥福をお祈りするとともに、今も療養を続けられている被害者の皆様、御家族の皆様にお見舞い申し上げます。また、薬害肝炎全国原告団・弁護団をはじめとする関係者の皆様の活動に深く敬意を表します。
私は、長年、ライフワークとして厚生労働行政に取り組んでおり、昨年の9月のC型肝炎救済特別措置法の改正にも取り組ませていただきました。
国民の生命と健康を守ることは厚生労働省の基本的使命であり、医薬品の副作用による悲惨な被害を再び発生させることのないよう、医薬品等の安全性の確保と健康被害の再発防止に全力で取り組んでまいります。 田村憲久
公明党の渡辺孝男議員、生活の青木愛議員、共産党の高橋千鶴子議員は、通常国会開幕直前であるにもかかわらず、会場に駆けつけて頂き、直接、挨拶をして頂きました。穀田恵二議員(共産党)、平山誠議員(みどり)は秘書の方がご出席頂きました。
そのほかにも、当時の厚生労働大臣として薬害肝炎問題を解決し、基本合意に調印した舛添要一議員(当時自民党、現改革)、当時の野党第1党として薬害肝炎問題を鋭く追及して世論を作った山井和則議員(民主党)、当時安倍総理の側近として薬害肝炎問題に尽力された萩生田光一議員(自民党)、当時の公明党党首として自民党に解決を働きかけるなど薬害被害者の信頼の厚い太田昭宏国交大臣、公明党厚生労働部会長として、官邸に働きかけを行った古屋範子議員、常に被害者に寄り添い、党首・代表自ら薬害被害者に面談してくださった志位和夫議員(共産党)や福島みずほ議員(社民党)、参議院議員・衆議院議員の時代を通じて、常に本音の温かい言葉で我我を叱咤激励してくださった田中康夫元議員、アジェンダに「肝炎の検診、治療法研究を含む総合的対策を確立する」、「薬害防止のための第三者機関を厚労省から独立して設置する」と盛り込んでくれた渡辺喜美議員(みんなの党代表)、福岡資麿議員(自民党)、谷岡郁子(みどり)、柏倉祐司議員(みんなの党)らからも、お祝いのメッセージを頂きました。
第2部では、薬害肝炎全国原告団弁護団が求めている「第三者組織」を取りあげました。
まず、薬害エイズ弁護団・薬害オンブズパースン会議事務局長であり、薬害肝炎検証再発防止委員会の委員を務めた水口真寿美弁護士、そしてPL問題など消費者問題に造詣が深く、内閣府消費者委員会の委員長代理を務めた中村雅人弁護士から、それぞれ基調報告をしてもらいました。
その上で、水口弁護士のコーディネートのもと、中村弁護士、川田龍平参議院議員、花井十伍氏(薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)、泉祐子氏(薬害肝炎全国原告団)という4名のパネラーが、意見を交換しました。
まず第三者機関の業務範囲としては、調査権限が必要であることで一致。
「例えば、薬害肝炎の場合、1980年代後半の青森集団感染の時、調査権限のある第三者機関が存在すれば、その後の被害拡大は防げたのではないか」「個別調査なくして薬害監視なし」という意見が出されました。
中村弁護士からは
調査権限だけでは足りません。消費者委員会の経験でいうと、官僚はなかなか資料を出してきません。出してきても2次加工のもの。粘り強く原資料の提出を求め続けました。すなわち、運用の中での消費者目線が大事なのです
という経験に基づく基調な意見を頂きました。
川田龍平参議院議員は、血友病治療のため血液製剤を投与されHIVに感染。実名を公表して薬害エイズ訴訟解決の原動力になりました。
その川田議員は
11歳で投与を受けて既に27年が経ちました。生かされているという思いで活動しています
みんなの党のアジェンダにも肝炎の治療体制にくわえて、第三者機関の問題を盛り込ませました
今後、議員連盟の中でも頑張っていきたいと思います
という力強い言葉を頂きました。
花井氏は大阪HIV訴訟の原告団でした。1999年からは薬害被害者の団体である薬被連の代表世話人を務めています。
花井氏は
小さく産んだものは大きくならない。最初からしっかりした人数を集める必要があるし、そのためには、予算を付けないといけません
HIV訴訟でも第三者組織の問題は考えていたが、時期尚早でした。ようやく時期が到来しました。検証委員会の提言も出て、もう今しかないと考えています
と述べました。
お姉さんが薬害肝炎被害者だった泉さんは、次のように訴えました。
姉は急性肝炎を発症して18年後、カルテ開示でフィブリノゲンを投与されたことを知りました。『沈黙を超えて』という弁護団の冊子に、姉は次のように書いています
『これだ、これだったのだ。17年間、出口の見えないトンネルの中を、何も判らぬまま進んでいかねばならなかった。18年目にして初めて涙が出た。今まで誰にも話さなかった思い、治療を続けながらも肝細胞がんになってしまった悔しさ。憤り。生きたい!まだまだ生き続けたという心からの叫び。やっとやっとトンネルに光が射し込んできた』
こう書いた半年後、姉は亡くなりました。このような薬害は2度となくさないといけない。そのためには、第三者機関はぜひとも必要なんです
この5周年記念集会で、薬害肝炎全国原告団弁護団は薬害監視のための第三者組織の必要性を再認識しました。被害者の思いを結実するためには今こそ第三者組織を立ち上げなくてはいけません。
今後、この日の議論をまとめた上、2月には国会で再び院内集会を開催し、各議員・各政党に対する要請を行っていく予定です。
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