一般用医薬品のネット販売を容認、最高裁第2小法廷判決
「ケンコーコム」と「ウェルネット」が、医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を規制した厚生労働省令は違法であると主張した訴訟において、最高裁第2小法廷が平成25年1月11日、省令は無効との初判断を示しました。
1審の東京地方裁判所平成22年3月30日判決(判例タイムズ1366号112頁、判例時報2096号9頁)は、規制は副作用を防ぐ上で合理性があると判断して、原告の販売会社が敗訴。
これに対して、2審の東京高等裁判所平成24年4月26日判決は、改正薬事法にネット販売に関する規定がない以上、規制に根拠はなく、「省令は改正法の趣旨を逸脱し無効」と判断していたものです。
この結果、2社の販売権を認めた国側逆転敗訴の2審・東京高裁判決が確定することになります。
2009年の薬事法改正は、市販薬について、副作用リスクの高い順に1類から3類に区分しました。
例えば、1類にはH2ブロッカー含有薬など、2類には解熱鎮痛剤、3類にはビタミンB・C薬などがあります。
そして、1類・2類に区分された薬は、薬局における対面販売を義務づけました。つまり、3類はインターネット販売できますが、1類・2類はインターネット販売できないことになっていたものです。
訴訟の背景は、改正薬事法が明文でネット販売について規定していないことがあげられます。
つまり、厚労省は、省令によって、副作用被害防止のため対面販売を原則として1、2類のネット販売を規制していたわけです。
このためインターネット販売会社が、省令は改正薬事法の趣旨を超えた権利制限であると主張するに至ったわけです。
この点、最高裁は、次のように指摘しました。
新薬事法36条の5及び36条の6は,いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売,授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより,その必要性等について明示的に触れているわけでもなく,医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について定める新薬事法37条1項も,郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない・・
また,新薬事法の他の規定中にも,店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか,郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。
なお,検討部会における議論及びその成果である検討部会報告書並びにこれらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において,郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが,それにもかかわらず郵便等販売に対する新薬事法の立場は上記のように不分明であり,その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも全くうかがわれないことからすれば,そもそも国会が新薬事法を可決するに際して第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い。
以上の最高裁をふまえると、厚生労働省が省令を改正するか、薬事法改正について改めて国会で審議する必要があると思われます。
なお薬害オンブズパースは平成23年1月21日、一般医薬品のインターネット販売に関して、安全性を無視した規制緩和に反対する旨の意見書を提出していました。
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