古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害肝炎

薬害資料館を目指して~薬害教育に関する検討会(第10回)

薬害教育に関する検討会の第10回が2012年6月18日、開催されました。
その議事録が9月11日に公開されています。

薬害スモン資料

薬害教育に関する検討会は、正式名を「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」といいます。その名称からも分かるように、薬害肝炎の検証及び再発防止のための委員会(いわゆる検証委員会)の最終提言を受けて開かれているものです。

これまで中学生教材を完成させ、現在は、薬害資料館などについて議論されています。

ところが「薬害資料館」を作りたくない事務局と、最終提言どおりに資料館を求める薬害被害者との間で対立が続いています。

薬害肝炎九州原告で検討委員会の構成員である手嶋さんは、次のように発言しています。

○手嶋構成員 薬害肝炎の検証で、薬害の研究資料館を設立するというので、この趣旨でこういう検討会が議題にのぼってあると思うのですけれども、今の室長の発言で構想がないと言われて、私も愕然としました。では、この委員会はこの議題について、構想がないということ自体、国側としては初めから設立するということは考えていないということなのですか。副対室とか、厚労省側の考え方が余りにも露骨過ぎて、私にはショックです・・
・・肝炎もHIVも、そしてその他の薬害の方々も高年齢化してきて、そして国や厚労省の話に言う薬害資料館の方の建設にもうちょっと真摯になって取り組んでもらえないでしょうか。私たちが多くの予算をかけてつくってくれと言っているわけではないのです。どこか休眠しているような公共の施設があったらそちらでも構いませんし、この厚労省だって私たちはいいと思っています。

他の構成員も厚労省の姿勢について批判しています。

○矢倉構成員 今の事務方のお話を伺っていますと、はっきり逃げの返事だなと思うのです。今までの協議の中で出てきたものを守っていく形にするには、やはりそういった資料館が必要だと私たちは思って一生懸命にいろいろな角度から話し合ってきたのです。ですから、まだまだ何を重要なポイントとして据えていくかということを先ほどおっしゃいましたけれども、それも大事だと思いますけれども、考えたことをどうするのですか。やはり、そういった貴重な今までの討議、先生方のお考え方とか、そういうものも含めて、我々があなたたちに提供した資料を、どういう資料があるかとか、いろいろ提供しました。それをどういう形で公開していくか、そういう場所がなかったら、一体これは何だろう・・・
○栗原構成員 どこに重点をとか、何を優先してというふうに言われると、ここに挙げられている機能は渾然一体としてお互い絡み合って一つの再発防止という大きな目標に向かっていくわけで、余りその問いかけにストレートに答える気持ちにはなかなかなりにくいのですが、紙などの資料が散逸の危機にある、あるいは、当事者が亡くなられつつあるというその辺からは、やはり集めて保存する場所が、まず物が要るのですよ。ということを今改めて思いました。そして、そこに一定の人が配置されて、既に冊子が2年度目に配付されて、遅々とはしているかもしれませんが実践の取組が始まっている。現場の先生たちの要望にこたえられる資料提供の話も前からあるわけですが、それもいち早く着手していかねばならない、そういう状況ですから、やはりその場所と人が求められているだろうと思います・・

厚労省からみると「薬害」とは、国の責任が糾弾され、敗訴を続けた負の歴史ということになります。

「そのような負の歴史を残す資料館は造りたくない」という本音があるため、議論がなかなか前進しないようです。

薬害スモン・公害センター

一方、被害者側はこれまで自主的な資料保存の努力を行ってきました。
例えば、今年で設立30周年を迎える「スモン・公害センター」。

薬害スモン訴訟で全面勝利したスモン東京原告団弁護団が、新宿のマンションの1室に、スモンや他の訴訟の資料を集めているものです。

薬害肝炎九州弁護団も立証活動の一環として何度も足を運び、資料の貸し出しも受け、薬害肝炎勝訴判決につなげました(写真は、スモン・公害センターにて、資料に囲まれた九州弁護団の若手弁護士ら)。

どのような歴史であろうとも二度と薬害を起こさないという真摯な反省があれば、厚労省側の取るべき姿勢も自ずと定まるはずというべきでしょう。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。