第23回医療関係訴訟運営改善協議会が福岡地裁で開催、院内ガイドラインと医療水準
目次
医療関係訴訟運営改善協議会を福岡地裁で開催
第23回医療関係訴訟運営改善協議会が2025年2月、福岡地裁で開催されました。
裁判官、患者側弁護士、医療機関側弁護士、医療機関の医師、学者らが集い、医療を取り巻く現状を共有して理解を深め、医療過誤訴訟の運営改善を図ろうという協議会です。
福岡地裁における同協議会は、それぞれの立場からの実務報告と率直な意見交換を行う機会として、相互理解に役立っています。
今年で25回目になりますが、私も都合が付く限り毎年参加するようにしています。25回目の今回は8名の裁判官・書記官、9名の医療関係者、24名の患者側弁護士・医療機関側弁護士、2名の大学教授が参加しました。
福岡地裁所長による挨拶に続いて、福岡地裁医療集中部(第3民事部)の裁判官から統計情報の報告、そして弁護士会から医療ADRの統計情報の報告が行われました。

院内ガイドライン
医療関係訴訟運営改善協議会は、毎年、テーマを決めて、医療機関、裁判所、患者側弁護士、医療機関側弁護士から発表して意見交換を行います。
ちなみに特定の事件について取り上げるものではありませんし、何か方針を決める場でもありません。
今年のテーマは「院内ガイドライン」でした。
院内ガイドラインが証拠提出されることもあり、適切な医療水準を設定するために院内ガイドラインの共通認識を持とうという趣旨になります。
医師から院内ガイドラインの策定・運用など実務の現場の取組について報告がありました。小さな手帳にして医療従事者に配布するなど、外部からは見えにくい医療機関の取組みについて参考になりました。
また医療機関側からは、院内ガイドラインはあくまで目標にすぎず、医療水準とは異なるという意見も示されていました。
続いて「法曹による発表」として、裁判所から医療水準の立証について基本的な考え方の説明。さらに、患者側弁護士として院内ガイドラインにまつわる事件報告、医療機関側弁護士としての院内ガイドラインの捉え方について報告がありました。
医療水準とは
医療水準について、最高裁は、「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求される」とし、最善の注意義務とは「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」であると判断しています。
その上で、各医療機関における医療水準は、全国一律ではなく、当該医療機関の性格、所在地の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであるとされています。
その医療水準は何によって形成されていくものかという基本的でありながら、必ず問題になる論点について改めて考える機会にもなりました。
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