X線画像確認時の経鼻栄養チューブ誤挿入の見落としが30件報告、医療安全情報218号
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X線画像確認時の経鼻栄養チューブ誤挿入の見落としが30件報告
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」218号・2025年1月号を公表しました。
経鼻栄養チューブを挿入した後にX線画像を確認したにもかかわらず、誤挿入に気付かなかった事例が報告されています(集計期間:2016年1月1日~2024年11月30日)。
経鼻栄養チューブとは経管栄養法のうち、栄養を胃または小腸に送り込むために経鼻的に挿入するチューブのことをいいます。長期間の留置に耐えうるように柔らかく細い管を用います。
日本における死亡例報告はさほど多くありませんが、海外では死亡症例報もかなり集積され、再発防止に役立てられています。
1つめの事例
1つ目の事例は以下の通りです。
医師AはICUで患者の経鼻栄養チューブを入れ替えました。挿入後に、医師Aとともに医師Bも、ポータブルX線撮影装置のディスプレイで画像を確認しましたが、経鼻栄養チューブの先端が胃内にあると誤って判断したものです。
その後、看護師が内服薬と栄養剤を注入したところ、患者の呼吸状態が悪化しました。そのため、別の医師Cが気管支鏡を行ったところ、経鼻栄養チューブが気管に挿入されていたことが分かったというものです。
2つめの事例
2つ目の事例は、以下の通りです。
嚥下障害のある患者に経管栄養を開始することになり、看護師が経鼻栄養チューブを挿入しました。医師AがX線画像を確認しましたが、経鼻栄養チューブの先端の位置は適切であると誤って判断したものです。
その後、看護師が内服薬と栄養剤を注入したところ、患者の呼吸状態が悪化しました。そのため、別の医師BがX線画像を確認したところ、経鼻栄養チューブが肺に挿入されていたことが分かったというものです。
再発防止のポイント
経鼻栄養チューブ挿入後のX線画像の確認は、先端の位置だけでなく走行確認のポイントに沿って行う必要があります。
「気管分岐部を越えても脊椎に沿って走行しているか?」
「ほぼ正中で横隔膜を越えているか?」
「先端は左横隔膜下で胃内に存在しているか?」
などのポイントが指摘されています。
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関連情報
医療ミス・医療過誤・医療事故の法律相談(古賀克重法律事務所)
医療安全情報(日本医療機能評価機構)
投稿者プロフィール
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。