「知っておきたい薬害の教訓」~再発防止を願う被害者の声から
薬事日報社から「知っておきたい 薬害の教訓」が出版されました。贈呈頂きましたのでご紹介します。
薬害肝炎検証委員会が取りまとめた「最終提言」は、薬害教育の必要性を指摘しました。
医師、薬剤師、歯科医師、看護師となった後、薬害事件や健康被害の防止のために、薬害事件の歴史に関する生涯学習を行う必要がある。
また、薬害事件や健康被害の防止のためには、専門教育としてだけではなく、初等中等教育において薬害を学ぶことで、医薬品との関わり方を教育する方策を検討する必要があるほか、消費者教育の観点から、生涯学習として薬害を学ぶことについても検討する必要がある。
この指摘を受け、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団(土井脩理事長・旧「日本公定書協会」)は、平成22年12月と平成23年12月、「薬害教育基礎研修講座」を開催し、医療従事者・製薬企業関係者に対する研修を行いました。
「知っておきたい 薬害の教訓」は、この基礎研修講座を取りまとめたものです。
「戦後の薬害事件の概要」から紐解きつつ、サリドマイド、スモン、薬害エイズ、薬害肝炎、薬害ヤコブという代表的な薬害にくわえて、ジフテリア予防接種禍事件、陣痛促進剤による被害、MMRワクチン被害など、様々な薬害が取り上げられています。
事件の紹介部分は、各薬害被害者がそれぞれの視点でわかりやすく執筆。例えば薬害肝炎部分は、東京原告団の泉さんが担当し、加熱製剤の製造承認を急がせたメモをのせるなど(同書75頁)、見やすく整理されています
終章では、「過去の薬害事件の教訓はいかにリスクマネジメントに活かされたか」として、土井理事長が、各事件の教訓を分かりやすくとりまとめています。
「薬害」というとどうしても難しいイメージがあると思いますから、こういう分かりやすい本をテキストに、様々な場面で薬害教育を行って頂きたいと思います。
最後に、過去の薬害事件を振り返ってみると、重篤な健康被害等が起きたあとの企業や行政関係者の姿勢・態度がその後の問題の解決に大きく影響することを関係者は心すべきでしょう。失われた命や健康被害を回復できない以上、被害者が望むことは同様な原因による被害の再発防止に尽きます。
そのためにも過去の薬害事件を負の遺産と考えるのではなく、その教訓を風化させずに、社会全体にとっての前向きな教訓としてとらえる姿勢が、企業や行政関係者には強く求められています(同書172頁)。
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