時速194㎞走行の車両による死亡事故で「危険運転」認定、大分地裁が懲役8年の判決
目次
大分地裁が時速194㎞走行に危険運転を認定
大分市の県道で2021年、時速194キロで走行したで車両が、交差点右折中の車両に衝突して運転手を死亡させてた交通事故。
大分地裁は2024年11月28日、危険運転致死罪の成立を認めた上、懲役8年の実刑判決(求刑12年)を言い渡しました。
大分地裁は、「時速194キロの速度で走行し、交差点に進入した行為は、ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスによって事故を発生させる実質的危険性があり、進行を制御することが困難な高速度に該当する」として危険運転致死罪の成立を認定したものです。
現在法務省が危険運転致死傷罪の適用要件の見直しを検討しており、本件のような高速度類型では、「進行制御困難性」にとどまらない「対処困難性」があるとして、新たな処罰類型を設けることも議論されています。
危険運転致死傷罪の適用要件の見直し
法務省の検討会は2024年11月、一定以上の速度での運転について、数値基準を設けて処罰対象とすることを視野に入れた報告書を取りまとめました。
悪質・危険な運転行為による死傷事犯が発生しており、厳正な対処が社会的に重要な課題になっています。
そこで、法務省が、交通事犯被害者遺族、刑事法研究者、実務家からなる検討会を開催して、悪質・危険な運転行為による死傷事犯に係る罰則の改正の要否、考えられる法整備の内容を検討していたものになります。
高速度類型の見直しの方向性
いわゆる自動車運転処罰法2条2号の「進行を制御することが困難」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態と解されています。
この点、「道路の状況」として他の通行車両や歩行者の存在を考慮できるかについて消極的な解釈を示す裁判例があるため、常識的に見て極めて危険性の高い高速度運転であっても、実際に進路を逸脱していない事案においては同号の適用が否定されるケースが相次いでいました(これに対して、冒頭の大分地裁は、直線道路の事故に、進行制御困難性を認めており、その意味で画期的な判決と評される所以です)。
そこで、検討会報告書は、「高速度運転による死傷事犯への適切な対処を可能とするような規定の在り方について検討すべきであるといった意見が複数の委員から述べられ、おおむね異論は見られなかった」としています。
その上で、同報告書は、「処罰範囲を適切に限定しつつ、構成要件を明確化して安定的な運用を確保するという観点から、常軌を逸した、およそ対処を放棄しているといえるような高速度をもって数値基準を設定し、その速度以上の速度で自動車を走行させる行為を一律に同類型の対象とすることが考えられるといった意見が大勢であった」と結論づけており、今後の議論の方向性を示しています。
関連記事
自転車の「ながら運転」、酒気帯び運転に罰則、改正道路交通法が令和6年11月1日に施行
電動キックボードで歩道を飲酒運転、福岡の大学院生を逮捕「大学でワインを4、5杯飲んだ」
関連情報
「自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会」取りまとめ報告書