薬害教育教材「薬害を学ぼう」、厚生労働省が全国の中学高校に配布
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薬害教育教材「薬害を学ぼう」
厚労省が薬害教育教材「薬害を学ぼう」を全国の中学高校用に配布しています。2024年も、7月下旬から全国の高等学校及び中学校に順次配布が始まっています。
2023年は全国5867箇所の高等学校に配布されました。
厚生労働省は、平成22年7月から、「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会を開催。そして、文部科学省の協力を得た上、薬害を学ぶための教材として「薬害を学ぼう」を作成・配布しているものになります。
「高等学校学習指導要領 公民科」が、薬害教育に関する事項を含んでいます。
また、高等学校の保健体育科(医薬品の制度とその活用)や中学校の社会科(公民的分野 消費者の保護)とも関連します。
そこで現在は、主に公民科(公共)を中心に活用してもらうことを念頭に、高校1年生の人数分の教材を全国の高等学校に配布しているもの。
また、参考として、全国の中学校にも1冊ずつ配布しています。
さらに、学校現場で教材をより有効に活用できるように、動画による「視聴覚教材」、指導のポイントをまとめた「指導の手引き」、実際に授業に取り組んだ実践例をまとめた「実践事例集」も作成されています。
薬害教育のモデル授業
実践事例集を充実する目的で、厚労省は、モデル授業を行う高校・中学を募集しています。
授業計画の策定に向けた支援や講師派遣も行われます。
これまで大阪府立布施高等学校、筑波大学付属中学校、青森山田中学校、京田辺市立田辺中学校など多くの高校・中学でモデル授業が実践されています。
九州では長崎県諫早市の長崎日本大学中学校が実践しました。
同中学校では、母子ともどもC型肝炎に感染した被害者の映像を視聴し、自分にも起こりうる出来事としてとらえ、自分の身に置き換えたらどのような気持ちになるかを考えるという授業が行われました。
なおモデル授業でない場合にも、薬被連が、薬害被害者の講師派遣を行っています。
改善点とは
アンケート結果(2023年)によると、視聴覚教材は約半数が生徒に共有されていないという問題点があります。
またそもそもパンフレットについても、実際に使用・使用予定は86人でしたが、配布のみ79人、使用や配布の予定なし41人という実態は、厚生労働省から各学校への働きかけが弱いともいえるでしょう。
現場からは、以下のように様々な視点から多様な声が届いています。
「いろんなパンフレットを頂くので時間がない」、
「入試に出題されることが少ない薬害の内容を十分に取り扱うことは難しい」、
「本校では請求権の範囲の国家賠償請求権のところで、薬害やハンセン病について触れている」、
「人権の差別の部分でB型肝炎訴訟で、事例として取り上げる程度しかなかった。しかし今回の教材のことを知り、次年度は有効活用していきたいと考えている」、
「薬害問題が起きた歴史的背景を探求できる内容にすると授業内で活用できる場面が増えると思う」、
「外部講師による講演とホームルーム活動での協同活動をうまく連動させ活用する予定」、
「いわゆる〇〇教育が教育現場を苦しめているという認識を持って頂きたい。とにかく一方的に送るのだけはやめて頂きたい。ちなみに薬害を知ることは重要だという認識は持っている」
毎年パンフレットを改訂して教育現場に一方的に配布するだけでなく、さらに教育現場の実態・カリキュラムに配慮した上での工夫した働きかけが必須の段階になってきたようです。
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