厚生労働省が不適切な美容医療について検討会、対応策を取りまとめへ
目次
厚生労働省が美容医療の適切な実施に関する検討会を開催
美容医療については、近年、施術の幅が広がると共に心理的ハードルも低くなり、比較的侵襲性の低い施術を中心に、需要が高まってきています。
若い世代を中心にした美容医療の利用件数の増加に伴って、各関係機関への相談件数も増えています。
ところが美容医療は、保険適用されない自由診療であるため、行政による指導も限定的になっています。
しかも医療機関が消費者保護法を含む法律について理解しておらず、不適切な広告表示だけでなく被害が発生してしまった後の対応に問題のあるケースもあります。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省が、美容医療に関する被害を防止し、質の高い医療の提供を行うための検討を開始しました。
美容医療の施術の実態
それでは美容医療を取り巻く現状はどのようなものでしょうか。
まず美容医療の施術数です。
コロナ禍が開始した2020年には、前年の123万から47・3万に減少したものの、その後は、2021年に202・8万、2022年に373・2万と右肩上がりに増加を続けています。
特に非外科的手技が287・4万と増加しているのが目を引きます。
非外科的手技としては、ヒアルロン酸等の「注入剤」、ケミカルピール、光若返り等の「顔面若返り」、そして脱毛・硬化療法などです。
さらにアンケートでは、女性10~20代、男性20代の半数以上が、美容医療に対して抵抗感・違和感がないというアンケート結果があります。
このように美容医療は、若年世代を中心に社会に浸透してきている実態があります。
美容医療に関連する相談件数の増加
消費者関係のデータベースである「PIO-NET(パイオネット)」によると、美容医療に関連する相談は、2018年・1741件、2019年・1862件、2020年・2053件、2021年・2602件、2022年・3462件、2023年・5507件と増加を続けています。
2023年の相談のうち、796件は、「危害」として登録されています。
具体的には、皮膚障害、熱湯、消化器障害、感覚機能の低下、神経・脊髄の損傷、凍傷などになります。
古賀克重法律事務所への相談内容としても、豊胸手術がうまくいかず再手術を繰り返しているが他の病院に行くと言ったら対応しないと言われた」、「レーザーを受けたが瘢痕が残った。あとから見返すと同意書には記載あったが、事前に十分な説明は受けていない」、「顔の脂肪注入を受けたが、しこりが残って、ダウンタイムにも1年以上かかった。事前の説明と違う」、「モニター価格というセールスで、二重手術を受けたが、結局、別の病院での手術まで必要になった」などの相談が入っています。
法律相談の傾向としては、事前に十分な説明がなく患者が不満に思っていること、再手術が必要な場合にも十分なインフォームドコンセントを行わずにとりあえず処置を行い患者の不満を抑え込み、他の病院受診をほのめかすと対応しない等が多いようです。
まとめ
美容医療の問題といっても、広告、説明義務、施術内容、料金など非常に多岐に渡っています。どこまで議論を行うか、射程の設定から問題になっています。
相談を受けていても、医師のモラルだけでは解決できない問題が噴出しています。
検討会の取りまとめの方向性が注目されるだけでなく、いかに実効性を持たせていくかが肝要になるでしょう。
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