生活道路の最高法定速度を時速30キロへ、警察庁案が示され道路交通法施行令改正へ
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生活道路の最高法定速度を時速30キロに
警察庁が、自動車が一定の要件に該当する道路を通行する場合の最高速度を引き下げること等を内容とする「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」等について検討を開始しています。
政府は、2024年7月23日、改正道路交通法施行令を閣議決定しました。
道路標識等による中央線又は車両通行帯のいずれもが設けられていない一般道路等について、自動車の最高速度を現行の60キロメートル毎時から30キロメートル毎時に引き下げるものになります(新道路交通法施行令第11条・最高速度)。
今回の警察庁の道路交通法施行令案でも、生活道路という規定ではなく、「前号に掲げる一般道路以外の一般道路 30キロメートル毎時」とされています。
意見公募(パブリックコメント)を経て、2026年(令和8年)9月1日の施行が予定されています。
30㎞に引き下げの理由
幹線道路の交通事故は21万件発生していますが、生活道路(車道幅員5・5m未満)における交通事故も7万件に達しています。
そして、交通事故死者数の約半数が、歩行中(37%)・自転車乗用中(13%)です。
しかも、歩行中・自転車乗用中の死者のうち、48%が自宅から500m以内で被害にあっています。
また、自動車の速度が時速30㎞を超えると、歩行者の致死率が急激に上昇しています。具体的には時速20~30㎞だと0・9%の致死率が、30~40㎞で3%、40~50㎞で8・4%、50~60㎞で17%に達しているのです。
以上をふまえて、歩行者・自転車の安全確保をより高めるために、今回の改正案では生活道路を含む一定の道路での速度上限を時速30㎞とするものになります。
従来通り時速60㎞の道路も
なお、「高速自動国道のうち、本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外のもの」、「自動車専用道路」、「道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている一般道路」、「道路の構造上又は柵その他の内閣法令で定める工作物により自動車の通行が往復の方向別に分離されている一般道路」は、これまで通り、時速60㎞制限となります。
まとめ
国は、いわゆる「ゾーン30」(区間を定めて最高速度を時速30㎞に制限)を進めて、道路にカラー塗装したりしてきましたが、より強い実効性を求めていくものになります。
いわゆる生活道路は、全国に122万㎞ある一般道のうち、実に70%の87万㎞を占めますから、一般ドライバーに与える影響は大きなものになります。
民事交通事故においては、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反は、「著しい過失」があるとして運転手に10%不利に修正されます。法改正後は、運転手がこれまで通り時速60キロ上限のつもりで走行していると、例えば時速45㎞でも「著しい過失」ありとして不利に修正されることもありえます。
施行は2026年9月を予定していますが、悲惨な交通事故を避けるためには、法改正前から各ドライバーに啓蒙して、繰り返し周知徹底していくことが望まれます。
生活道路にスピードを緩めず進入する車による交通事故が依然、各地で発生している一方、標識を設置するなどの対策には財政上の負担も伴うことから、警察庁は生活道路の法定速度を、一律で時速30キロまで引き下げる方針を固めました。
ただ「生活道路」には、法律上の明確な定義がないことから、警察庁は、センターラインや中央分離帯のない道路で、目安として道幅が5.5メートル未満の狭い道路などを対象に、法定速度を見直す方針です。
今後、意見を募集して道路交通法の施行令を改正し、再来年9月までに実施したい考えです(2024年5月30日付NHK)。
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