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旧市立川西病院が総胆管結石に対する内視鏡手術後の膵炎発症・死亡で1500万円の示談

総胆管結石に対する内視鏡手術後の膵炎発症・死亡で示談

 旧市立川西病院が男性患者(80代)に対して、総胆管結石に対する内視鏡手術を行った際、ガイドワイヤーで膵菅の壁を破り、膵炎が発症し、その後、患者が死亡した事案で1500万円を賠償することになりました。

 兵庫県川西市の旧市立川西病院は2022年9月、川西市立総合医療センターに機能移転しています。

総胆管結石に対する内視鏡治療

 総胆管結石は、いったん急性胆管炎や膵炎を合併すると重症化するリスクがあるため、例えば無症候でも治療が推奨されています。

 十分に活動性のある患者ではたとえかなりの高齢でも胆管結石に対して、内視鏡的総胆管結石摘出術を行うべきであるとされています(胆石症診療ガイドライン・日本消化器学会)。

 患者の状態、 結石の性状・位置によって乳頭処置法とデバイスの選択が必要となります。そして、 治療困難例にはEUSガイド下治療や経皮的治療へ移行することもありますから、 偶発症も考慮したうえで患者ごとに適切な治療選択が求められています。

胆石症診療ガイドライン2021

裁判例

 総胆管結石に対する内視鏡治療(内視鏡的胆管結石除去術)で合併症が発生した場合、それが直ちに医療過誤(医療ミス)になるわけではありません。

 術中どのような操作を行ったのか、術後どのような処置をしたのか、経過観察として妥当だったのか等について、医学的知見に基づいて過失があるか・因果関係がみとめられるのかについて判断していくことになります。

 そのほか、手術適応があったのか、事前の説明義務を尽くしたか、ERCP(内視鏡的胆管膵菅造影)における合併症、ERCP後膵炎発症と経過観察義務など、事案や患者の状態に応じて論点も多岐に渡り、相談や裁判例も多い分野です。

川西市は29日、旧市立川西病院が2017年に80代男性を手術した際、誤って膵管を傷つける事故があったと発表した。男性は一時回復したが、合併症が悪化し約2カ月後に死亡した。市は過失を認め、男性の遺族に1500万円を賠償する方針。6月5日開会の市議会定例会に関連議案を提出する。

市によると、男性は17年6月6日、総胆管にある結石を取り除く内視鏡手術を受けた。医師は総胆管方向にガイドワイヤーを進めたが誤って膵管の壁を破り、翌日に膵炎が確認された。同病院は治療を行ったが十二指腸にも炎症が広がるなど重症化する傾向がみられ、集中治療室のある大阪府内の病院に転院。一時は食事が取れるまで回復したが、持病の肺疾患と腎不全が影響するなどし、同年8月9日に亡くなった。

男性の遺族は「手術ミスがなければ亡くならなかった」と主張し、川西市と協議。市は「手術と男性の死因との因果関係は不明」としつつも、「医療行為で膵管損傷や膵炎に至った部分には過失があった」と認め、今月13日、賠償金を支払うことで合意した。

5月29日付神戸新聞

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弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

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