新潟市民病院が8300万円で示談、漏斗胸の手術後、肺気胸で在宅経過観察の中学生が死亡
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新潟市民病院が8300万円で示談
漏斗胸の手術後の合併症で肺気胸が出ていた中学生の患者が呼吸不全で死亡した医療事故で、新潟市民病院が、入院処置すべきところを在宅経過観察したことについて過失を認め、約8300万円の示談金を支払って示談することになりました。
新潟市民病院は、両肺の同時気胸が認められる場合は、自覚症状が軽かったとしても入院処置を行うこと、担当する診療科が密に連携を取ることなどの、再発防止策を示しています。
気胸とは
気胸は肺や胸壁に穴が開いて、空気が胸腔内に入り肺虚脱状態になります。それが原因で胸痛や呼吸困難を引き起こすという病態を表す言葉であって病名ではありません。
ですから、気胸の原因となる疾患は様々です。例えば、外傷、腫瘍、間質性肺炎、肺気腫、感染症、肺炎などがあります。
肺循環疾患以外の肺組織の破壊を伴う肺疾患はすべて気胸の原因となりえます。
医療行為の結果発生した気胸は、医原性気胸といい、広い意味での外傷性気胸になります。
新潟市民病院のケースは漏斗胸の手術後に気胸が生じたケースでした。
漏斗胸(ろうときょう)は、前胸部中央が漏斗状に陥凹している胸郭変形です。若年者、男性に多くみられます。多くは無症状ですが、胸郭変形に伴う心肺の圧迫,拘束による呼吸困難,胸痛,動悸などを生じます。そして心肺機能障害が高度の場合には、胸壁の手術(胸骨翻転術、胸骨挙上術)が行われます。
裁判例
気胸に関連した医療過誤裁判は少なからずあります。
例えば、緊張性気胸の診断・処置が遅れたために交通事故で搬送された患者が死亡したとして、遺族が損害賠償請求した事案では、名古屋地裁平成24年12月25日判決が請求を棄却しています(控訴)。
気胸といっても前記の通り、原因となる疾患は様々ですので、原因疾患・患者の年齢・容態・緊急性・必要とされる医療行為等による個別判断になってきます。
新潟市民病院によりますと、おととし12月、男子中学生が先天性の胸の病気を治療する手術を受け、生徒は退院しましたが、手術の合併症として肺に穴があく肺気胸の症状がみられたということです。
その後、去年2月に肺気胸が再発したとみられるせきなどの症状があり、病院側は血中酸素飽和度が良好だったことなどから経過観察としましたが、受診から8日後、男子中学生は学校から帰宅後に容体が急変し、肺気胸による呼吸不全で亡くなりました。市民病院は、経過観察にしたことと、男子中学生が亡くなったこととの間に因果関係があると判断し、医療事故として遺族と協議を続けてきましたが、遺族に対して8300万円余りの和解金を支払うことで合意したと30日発表しました。
5月30日付NHKニュース
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