古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害肝炎集団訴訟

イレッサ和解反対の文案作成で厚労省間杉純局長・平山佳伸審議官を処分へ

厚労省の官僚が薬害イレッサ訴訟における裁判所の和解勧告を批判する内容の声明文案を作成し、日本医学会に渡していた問題に動きがありました。

厚労省は24日、間杉純(ますぎ・じゅん)医薬食品局長と医薬担当の平山佳伸(ひらやま・よしのぶ)審議官、担当室長の3人を訓告、担当課長を厳重注意の処分とすることを決めました。
経過を振り返ると下記の通りです。

2011年
1月7日  大阪地裁・東京地裁が和解勧告
1月24日 日本医学会高久史麿会長が和解勧告を批判する声明
3月    厚生労働省が検証チーム設置

検証チームの調査の結果、以下の事実が判明しました。
医薬食品局長は1月、和解勧告について局内で協議して、対応を指示。指示を受けた平山審議官らが和解案を批判する文案を作成して、日本医学会の高久史麿会長に渡していたことが判明したというものです。

間杉純氏は、1954年生まれ、1977年3月東京大学法学部を卒業後、同年4月旧厚生省に入職。1996年に薬務局監視指導課長(後に医薬安全局監視指導課長)、その後、保険局保険課長、同局総務課長、2008年7月から社会保障担当政策統括官を経て、2010年7月30日付けで医薬食品局長に就任(当時長妻厚生労働大臣)していました。

間杉氏は医薬食品局長就任時の取材に対して、「スモン訴訟、エイズ訴訟の和解問題に対応した経験から、医薬行政に対する原点は薬害事件。薬害を二度と起こさないというのが、私の原点だと思っている」と抱負を語っていました。

しかも、改正薬事法の普及定着に向けて、「薬はリスクを伴うものなので、きちんとした体制で情報提供していかなければならないことを、繰り返し世の中に対して訴えていかなければならない」とも主張していた(2010年8月26日付け薬事日報)ということですから、言動不一致は明らかです。

一方、平山佳伸審議官は、1975年京都大学薬学部卒業、1980年京都大学大学院薬学研究科博士課程修了。 1980年厚生省環境衛生局食品化学課に勤務し、その後、保険局医療課、薬務局新医薬品課、医薬食品局安全対策課長を歴任し、2010年7月30日付けで医薬担当審議官に就任していました。

この平山氏は実は、2002年当時、イレッサの承認審査を担当した審査チームの責任者です。自分の当時の責任を回避するため、まさに事件当事者が和解勧告つぶしを行ったという前代未聞の事件というべきでしょう。

ちなみに平山氏は大阪市立大学大学院医学研究科教授に出向当時、薬害イレッサ訴訟西日本訴訟(大阪地裁)において、国側証人として証言も行っています。

平山氏は法廷で開き直り、
「原告が言うのであればお詫びしましょう」、
「それで気が休まるのであれば頭も下げましょう」、
「裁判で判決が出されたのだったら損害賠償は払いましょう」
などと証言していました。
そのように証言しながら和解勧告つぶしに動いて控訴したわけです。

以上の事件の経緯、両者の経歴、イレッサ問題に対する関与の度合い、和解協議に与えた影響、行政が世論をミスリードした上で司法への不当な影響を与えようとしたこと、公務員ひいては薬事行政に対する国民の信頼を失墜させたことなどを総合考慮すると、「訓告」という処分は軽いと言わざるを得ないでしょう。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。