フランチャイズ契約においてフランチャイザーの指導援助義務違反を認めた裁判例
フランチャイズ訴訟における主な争点は、契約締結段階における情報提供が適切であったか(情報提供義務違反)、契約締結後の指導援助が適切であったか(指導援助義務違反)です。
私がフランチャイジー(加盟店)側代理人として争った訴訟でもその両者を争点としましたが、最終的には前者に力点を置いて、勝訴ないし和解しました。
というのも訴訟に至るほどフランチャイジーの不満が大きな事案は、契約勧誘行為に少なからず問題があるため、情報提供義務違反の方が立証が容易であるとともに、フランチャイザー(本部)による指導援助のレベルは水掛け論争に終わる危険性もあるためです。
この点、後者の指導援助義務違反を認定したおもしろい判決が出ています。この東京高裁平成21年1月27日判決(判時2068号41頁)は、
(本部は)経営指導について専門性のあるSV(スーパーバイザー)を必要な人員だけ揃える努力をすることを契約の準備段階から完全に怠り、SVの多くをチェックリスト項目の形式的チェックしかできないような経験と能力に乏しい若手社員をもって充て、SVの研修、教育に費用と時間をかけることも怠ったまま、このような若手社員SVを中心に加盟店への臨店をさせたにとどまるものである
経営指導を行う債務は、一定の結果を実現することを債務の内容とするものではないことを考慮に入れても、このように最初から専門性のあるSVの即戦力採用も社内育成も十分に行わず、・・専門性の乏しい若手社員のSVの臨店しか受けることができないような状態を続けることは、経営指導援助義務の債務不履行に該当することは・・明らかである
と判示しています。
その上で損害額については、口頭弁論の全趣旨及び本件全証拠に基づいて認定するとして、
1か月につき1店舗あたり2万円相当の損害(損益の悪化)が生じた
と認定しました。
上記部分だけではなく事実認定箇所でも丁寧な認定を行っていて参考になります。翻ってみれば、フランチャイジー側代理人による細やかな立証が功を奏した事案ともいえるでしょう。
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