古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

ニュース医療・医療過誤医療事故医療過誤・医療ミス 整形外科

新潟市民病院が1900万円で示談、脊髄造影検査で男性患者が下半身麻痺

新潟市民病院が1900万円で訴訟前の示談

新潟市民病院が、医療ミスにより下半身麻痺の後遺した男性患者と1900万円で示談しました。

2021年6月、腰部脊柱管狭窄症等疑いで脊髄造影検査をした際、針が誤って脊髄に入った結果、造影剤を誤注入させて、下半身麻痺が残ってしまったという事案です。
新潟市民病院は、脊髄損傷と下半身麻痺との間の因果関係を認めて、男性患者と示談協議したものです。

今後の再発防止策として、病院側は、脊髄造影検査で造影剤を注入する際、支障があった場合は検査遂行を急がず、他の検査を先行させること、そして穿刺困難となった原因についても十分検討した上で、実施しない選択も考慮すること等を徹底するということです。

脊髄造影検査とその合併症とは

腰痛がある場合など脊髄の圧迫所見を確認するため、MRIや脊髄造影検査が行われます。変形性脊椎症の確定診断には必要と言われています。

脊髄造影検査は比較的安全性の高い検査と言われています。合併症の症例報告としては、腰部脊柱管狭窄症で検査後に自立歩行できないめまいが生じたケース、頚椎症性脊髄症で検査後に尿閉が生じたケースなどがあります。

今回のケースは、安易に針の誤進入によって脊髄に造影剤を注入してしまっていますから、過失(注意義務違反)が明らかな事案だったものと思われます。

損害項目の詳細は不明ですが、年齢が70歳代ということですから、後遺症逸失利益があまり算定されず、後遺症慰謝料を中心に協議された金額かもしれません。

その他の示談例

整形外科では侵襲性が高い施術も少なくなく、予期せぬ重大な合併症が発生することもあります。患者に後遺する症状が日常生活の不具合に直結するため、ご相談も多い分野です。

私の担当した事案では、脊髄造影検査ではありませんが、脊椎後方固定術の際、骨セメントを漏出させて下半身麻痺を後遺させたという事案があります。
脊椎後方固定術とは、脊椎固定術の1つで椎弓および棘突起を後方から固定する術式です。
その術中に骨セメントを漏出させてしまい、両下肢体幹機能障害1級の後遺障害を後遺してしまった結果、患者が寝たきりを余儀なくされたというものでした(詳細は関連記事をご覧ください)。

病院によりますと、今回の検査では造影剤注入のための穿刺を3カ所行っていて、その後の撮影画像から脊髄内に造影剤が注入されていたことが判明。患者の負担を考慮して検査をその日で終えようとして、通常穿刺を行わないやや高い椎間から穿刺したことと、その際に髄液の流出が十分確認出来なかったが、針先が髄腔にあると判断したことが原因だということです。

脊髄の損傷と下半身麻痺が残ったこととの因果関係が認められると判断し、男性患者と和解に向けて示談協議を進めたところ、議会の議決条件とする和解金1900万円で合意しました。

市民病院は今後、脊髄造影検査で造影剤を注入する際、通常の手順で行い、支障があった場合は検査の遂行を急がず、他の検査を先行させて、穿刺困難である原因についても十分検討した上で、実施しない選択も考慮すること、実施する場合においても通常の手順を順守した範囲で行うことを徹底するとしています。

NST新潟総合テレビ

関連記事

脊椎後方固定術の際、骨セメント漏出させて下半身麻痺を後遺した(実績・示談例)
北九州市立医療センターの点滴作業ミスで患者が死亡、2500万円損害賠償の方針
新潟県立新発田病院が2260万円で訴訟上の和解、腹腔鏡下早期大腸がん手術で膵管損傷し腹膜炎を発症し排泄障害が残存
京都大学病院に1億3500万円の賠償命令、抗菌薬の投薬を怠り29歳女性が髄膜炎菌感染症で死亡

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。