相続土地国庫帰属法が施行、いらない土地を国が引き取る要件とメリット・注意点は
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相続土地国庫帰属法が令和5年4月27日から施行
相続土地国庫帰属法が成立し、令和5年4月27日から施行されました。
相続土地国庫帰属制度とは、相続(遺贈)によって土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合、土地所有権を放棄し国に引き渡すことができるという制度です。
第204回通常国会(令和3年)において、相続登記の義務化(原則3年以内)とともに新しく導入されました。
所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地)が増加していることに鑑み、国庫に帰属させることができる制度を創設することにより、所有者不明土地の発生の抑制を図ることを立法趣旨とする法律です。
背景~東日本大震災の復興復旧の妨げ
日本では高齢化とともにいわゆる所有者不明土地の問題がクローズアップされるようになりました。国土交通省の地籍調査によれば、所有者不明土地は22・2パーセントあるという指摘もあります。
そして「所有者不明土地」といっても、所有者が失踪して不明という場合だけでなく、むしろ土地とその所有者が国のデータ管理上、つながっておらず不明になっている場合が多いのです。つまり、発生原因のうち、「相続登記の未了」が実に65・5%に達しています。
日本では相続が発生した後も、相続登記せずにそのまま放置するケースが後を絶ちません。そして相続を繰り返し当事者が増えるにつれて、収拾がつかなくなっているというわけです。
所有者不明土地は、民間の土地取引だけでなく、公共事業の用地取得、森林農地の管理など様々な場面でひずみを生じさせるに至っています。
例えば東日本大震災の復興にあたっても、権利関係の集約に苦労したという声が数多く寄せられており、今回の議論の本格化を即したという経緯があります。
相続土地国庫帰属法の要件は
すべての相続不動産について国に引き渡すことができるものではありません。様々な要件が定められています。
例えば、承認申請は、建物が立っている土地、担保権・使用収益権が設定されている土地、他人の土地利用が予定されている土地、特定の有害物質によって汚染されている土地、境界が明らかでない土地などは、対象外になります(同法2条3項)。
また、承認申請が認められても、例えば、崖がある土地のうち、通常の管理に当たり過分の費用又は労力を有するもの、地上に管理・処分を阻害する有体物があったり、地下に除去しなければ管理・処分できない有体物がある場合には、承認が認められません(同法5条)。
メリット・注意点
注意点としては、前記の通りの様々な要件があることにくわえ、費用がかかることです。
申請する際には一筆あたり審査手数料1万4000円がかかります。
そして法務局による審査を経て承認されると、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。例えば、宅地は面積にかかわらず20万円、田・畑は面積にかかわらず20万円、森林は面積に応じて算定した負担金、その他雑種地・原野は面積にかかわらず20万円の負担金を負うことになります。
逆にメリットとしては、負担金以上に管理に労力のかかる森林、管理してくには心理的負担の大きい不動産等は検討の対象になってくるでしょう。
また公共事業の用地取得や森林農地の管理に際して、行政が当事者に対して申請をうながしていくというケースも増えていきそうです。
国や地方公共団体が申請後、承認申請者と交渉して、国庫帰属の承認がされる前に土地の寄付を受けることも想定されています。その場合には、承認申請は取り下げて負担金支払いも不要となることも想定されています(衆議院法務委員会・小出邦夫政府参考人答弁)。
関連情報
・相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」(政府広報オンライン)
・相続土地の登記義務化と国庫帰属制度(国民生活センター)
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