薬害肝炎九州原告団総会を岡山で開催、山陽新聞阿部光希記者の特別講演から差別偏見を考える
目次
2023年の薬害肝炎九州原告団総会を開催
2023年の薬害肝炎九州原告団総会を岡山市で開催しました。
2020年から3年間はコロナ禍のため、ウェブ会議による開催でした。ようやく今年2023年は現地でのリアルとウェブ会議を組み合わせて開催できたものです。
原告弁護団のメンバーが実際に集まるのは2019年の唐津開催以来。ウェブ会議では顔を合わせていたとはいえ、久しぶりのリアル会議に原告の皆さんも笑顔を見せていました。
各分野からの報告
まず、「恒久対策(治療体制整備)」について九州原告団代表の出田さんから、「薬害の再発防止」について九州原告団代表の小林さんから、「被害救済」について九州護団代表の浦田弁護士からそれぞれ報告がなされました。
ちなみに小林さんはウェブ会議により参加報告になりました。
さらに「遺族会の活動」についてKさんから、「会計報告」についてOさんから報告して頂きました。
特別講演「ハンセン病問題を取材して~瀬戸内3園を中心に」
九州原告団総会では、毎回、医療講演会や勉強会を企画しています。
今年は、差別偏見について考えるをテーマに、山陽新聞社編集局報道部の阿部光希記者をお招きして、「ハンセン病問題を取材して~瀬戸内3園を中心に」と題した特別講演を実施しました。
阿部記者は、2015年1月から2016年3月まで79回にわたって朝刊連載した「語り継ぐハンセン病-瀬戸内3園から」を担当しました。この連載は2016年に日本医学ジャーナリスト協会賞大賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。2017年3月には単行本化されて好評を博しています。私も早速アマゾンで購入しました。
阿部記者はパワーポイントを利用し、昔の園や監房の写真もふんだんに紹介しながら分かりやすく、瀬戸内3園の地理的・歴史的状況、ハンセン病問題の歴史、そして取材を通じて知り合った元患者らの被害を説明していきました。
私もハンセン病違憲国賠訴訟弁護団に所属し、瀬戸内3園を含めて全国の療養所を回った経験があります。熊本県のハンセン病療養所・菊池恵楓園で実施した検証責任者として全国の園の資料を集めた経験がありましたが、これまで見たことのなかった写真も多くとても興味深く聞かせて頂きました。
差別の背景と教訓を生かすために
阿部記者は、差別の背景として、「見えないものへの恐怖。正しい知識の不足」を指摘します。その上で、「患者は本来、社会で守られるべき存在」であるにもかかわらず、「患者=かわいそうという見方。自分たちと対等の関係とみなしていない」と言います。さらに、専門家の発言や国の政策が「怖さを強調し、予防の必要性ばかり発進し、人権侵害の加害者になるとの認識が社会に乏しくなっていったと指摘しました。
それでは教訓を生かすためには何が必要になるのでしょうか。
まず阿部記者は、長島で行われている世界遺産運動も含め、隔離政策時代の建造物のほか、入所者が書いたものなどを残していくこと、「歴史として残し、学べるようにすること」が大事だと述べました。この点は、まさに薬害肝炎原告団弁護団が求める「薬害資料館」にも通じる問題意識だと思います。
次に阿部記者は、当事者と交流し、感染症に対する正しい知識の普及啓発とともに、当事者の話を聞ける機会を増やすことも必要であると指摘しました。
そして差別される側に思いを巡らすことが重要であり、HIV・薬害肝炎・新型コロナ・・繰り返される差別をふまえると、感染症患者への差別を禁じる法律も必要ではないかと述べ、講演を締めくくりました。
例えば薬害肝炎全国原告団も東京で原告団事務所を開設するにあたり、同じビルの歯科医院から「患者さんに影響がある」とクレームを受けてショックを受けたことがありました。
人間の根源に根差す差別偏見にどのように向き合うのか、当事者として何をしていけるのか・・一人ひとりが思いをはせる良い機会になりました。
関連記事
・薬害肝炎九州原告団総会2019を開催(唐津)
・薬害肝炎九州原告団総会2018を開催(宗像)
・薬害肝炎九州原告団総会2017を開催(山口)
関連情報
・ハンセン病国賠訴訟とは
・ハンセン病療養所・強制収容の写真
・NPO法人ハンセン病療養所世界遺産登録推進協議会・会報
・NPO法人ハンセン病療養所世界遺産登録推進協議会について(瀬戸内市)