薬害C型肝炎全国弁護団が一斉提訴、救済法延長を求めて
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薬害肝炎全国弁護団が一斉提訴
薬害肝炎全国弁護団が2022年10月14日、一斉提訴を行いました。薬害肝炎救済法の期限が2023年1月に迫る中、臨時国会での法改正を求めています。
今回の提訴は仙台地裁5件、東京地裁2件、大阪地裁1件です。なお九州弁護団による福岡地裁への追加提訴も準備中です。
投与年代としては1960年代が1名(69年)、1970年代が2名(75年、76年)、1980年代が4名(87年)、1990年代が1名です。
診療科としては、心臓外科4名、産婦人科3名、整形外科1名。
男女比は、男性4名、女性4名。
フィブリノゲン製剤は産婦人科・産科の大量出血で使用されたケースが多く、被害者も女性が多くなっていますが、それ以外の診療科でも幅広く使用されてきた実態があります。今回の提訴もその実態を反映し、心臓外科による投与者が多く、男性女性比も同数となっています。
薬害肝炎全国弁護団の解決ケース
2002年以来の薬害肝炎全国弁護団による提訴は2267件、うち和解成立2201、訴訟継続中66件となっています。
和解成立のうち約10%は診療録(カルテ)が残されていなかったものの、医師の証言等によって立証して和解に至ったケースになります。
薬害肝炎訴訟の解決枠組み
なおC型肝炎患者は全国で100万人から150万人いると推計されています。感染原因も、輸血、母子感染、予防接種等様々なものがあり、感染原因不明の方も少なくありません。
「薬害肝炎問題」は、フィブリノゲン・クリスマシン等の特定の血液製剤投与が確認できて、C型肝炎に感染した被害になります。
そのため感染原因不明であったり、フィブリノゲン等の投与が何らかの資料に基づいて立証できなければ裁判の対象にはなりません。
感染原因を問わずC型肝炎患者に給付金を、という主張もあるようですが、われわれは20年前、2002年の夏、全国の医療問題を扱う弁護士が集って集中的に討議しました。そしてすべてのC型肝炎患者を対象として損害賠償請求は不可能であることから(他の感染症との公平が図れず、もはや法的な請求ではなくなります)、薬害被害者に絞って司法の場で国と製薬企業の法的責任を追及することを決定しました。そして薬害の対象にならないC型肝炎患者救済としては、治療費減免や治療体制の整備を目指すことを決定したのです。
以上の方針に従って、薬害訴訟では2002年の提訴から約5年で薬害肝炎救済法が成立し現在に至っています。そして患者会やB型肝炎原告と連携した活動も続けて、肝炎対策基本法を制定させ、インターフェロン治療など治療費の減免を勝ち取るとともに、現在も活動を続けています。
血液製剤フィブリノゲンなどの投与でC型肝炎に感染したとして、患者や遺族が14日、国に薬害C型肝炎救済法の給付対象とするよう求めて、仙台、東京、大阪の3地裁に一斉提訴した。代理人弁護団は「最近、投与の記録が見つかった事例も複数あり、救済されていない人がまだたくさんいる」と訴えている。
弁護団によると、今回の訴訟は患者5人や患者3人の遺族が原告。薬害C型肝炎を巡っては、提訴後、投与した記録などに基づいて和解手続きが行われ、慢性肝炎や肝がんなど症状に応じて1200万~4千万円の給付金が支払われる。
全国には推計で1万人以上の被害者がいる。
10月14日付共同通信
全国には推計で1万人以上の被害者がいるが、救済法は来年1月16日が提訴期限。
弁護団は「期限の延長や、劇症肝炎で死亡した場合の給付額を引き上げる法改正を求めたい」としている。
10月14日付産経新聞
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参考文献
薬害肝炎裁判史(日本評論社)が発刊、全国弁護団としての実践とは