新潟県立新発田病院が2260万円で訴訟上の和解、腹腔鏡下早期大腸がん手術で膵管損傷し腹膜炎を発症し排泄障害が残存
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新潟県立新発田病院が2260万円で訴訟上の和解
腹腔鏡を用いた早期大腸がん手術に際して、膵管損傷に起因する術後の腹膜炎を発症し70代の男性患者に排泄障害などが残存しました。
県立新発田病院は新潟地方裁判所の和解案を受けて、約2260万円にて和解成立することになりました。
大腸がん腹腔鏡下術と合併症
大腸がんは、年間15万人以上が罹患する、日本で最も多いがんと言われています。そのうちの約17パーセントが肝臓・肺への転移等が認められるステージ4大腸がんとなっています。
腹腔鏡下大腸癌切除術は1991年に世界ではじめて報告されました。
腹腔鏡下手術は従来の開腹手術と比べ低侵襲で整容性に優れています。 低侵襲治療としての地位を確立しながらこの10年あまり急速に普及してきました。
このように腹腔鏡下術は急速に広がり、進行性結腸癌や直腸癌まで適応が拡大されていきましたが、大腸癌治療ガイドラインでも「術者の経験、技量を考慮して決定する」と指摘されているところです。
大腸癌手術による膵菅損傷の症例報告はあり、多くはないが注意すべき合併症の一つになります。
ちなみにステージ4大腸がんの治療について、国立がん研究センターが2021年2月10日、切除不能転移を有するステージ4大腸がんに対して原発巣切除を先行しても生存改善は認められないという注目すべき研究結果を発表しています。
これまで方針が二分していた、ステージ4大腸がんで原発巣による症状がない場合の原発巣切除の非切除に対する優越性を検証した。
検証の結果、原発巣切除・非切除で生存期間に差はなかった。原発巣切除では、切除後の化学療法による有害事象の頻度が高く、より重度で、合併症死も認められた。
ステージ4大腸がんで原発巣による症状がない患者さんに対しては、これまで原発巣切除が多くされていたが、本結果により原発巣非切除で、化学療法を行うことが標準治療となることを世界に先駆けて明らかにした。
裁判例
膵管損傷ではないですが、腹腔鏡下手術にて腸管穿孔を生じさせて賠償責任を命じた裁判例や示談例は少なくありません。
例えば、鹿児島地裁平成24年9月11日判決は、医療機関に対して損害賠償を命じています。
直腸癌に対する腹腔鏡補助下超低位前方切除術の際、執刀医が手術器具で腸管を損傷したにもかかわらずその対応をしないまま手術を終了したことから患者が腹膜炎で死亡した事案について、「少なくとも不要な腸管損傷を回避し、腸管損傷があった場合にはこれに対して縫合等の適切な処置を講じることは本件手術当時においても執刀医の注意義務として当然に要求されることであったと解される」と判断したものです。
新潟県は5日、医療事故に係る訴訟案件について、裁判所から和解案が提示され、県と相手方の双方が同意する見込みとなったことから、令和3年2月議会に損害賠償額の決定について提案すると発表した。
平成30年11月、胎内市在住の70歳代男性が、県立新発田病院で腹腔鏡を用いた早期大腸がん手術中、膵管損傷に起因する術後の腹膜炎などを発症。その後、人工肛門造設となり、入院を継続。昨年2月、治療が終了し退院したものの、排泄障害などが残存。
昨年6月に患者が提訴(新潟地方裁判所)し、。同年12月、裁判所から和解案が提示され、患者が同意する旨意思表示した。
損害賠償額(2月議会提案予定)は、2,260万1,380円(2021/2/5付・にいがた経済新聞)