国際医療福祉大学で薬害肝炎九州原告団が講義、広がる薬害教育
目次
薬害肝炎原告団弁護団による薬害教育の実践
薬害肝炎原告団弁護団は、全国の中学・高校・医学部・歯学部・薬学部・看護学校における薬害教育のお手伝いをしています。
そのきっかけは薬害肝炎検証委員会の最終提言(46頁)です。
最終提言は2010年4月、「大学の医学部・薬学部・看護学部教育において、薬害問題や医薬品評価に関して学ぶカリキュラムがないか少ないため、関係省と連携してカリキュラムを増やすなど、医療に従事することになる者の医薬品に対する認識を高める教育を行う必要がある」と指摘し、「具体的には、医学部・薬学部・看護学部におけるコアカリキュラムや、国家試験の問題作成基準の見直しを含めた検討を行うべきである」と提言していました。
この最終提言を受けて、多くの医学部・歯学部・薬学部が、薬害教育をカリキュラムに取り入れるようになりました。
全国の大学等の導入状況については、文部科学省が毎年、「薬害問題に対する取組状況調査報告」にまとめています(末尾リンク参照)。
例えば令和2年の調査報告によると下記の通りとなっています。
医学部は、薬害被害について学ぶ授業は81校中80校が実施、薬害被害者の声を聴く授業は81校中49校が実施してます。
歯学部は、薬害被害について学ぶ授業は29校全校が実施、薬害被害者の声を聴く授業は29校中17校が実施してます。
看護学部は、薬害被害について学ぶ授業は289校中243校が実施、薬害被害者の声を聴く授業は289校中65校が実施してます。
薬学部は、薬害被害について学ぶ授業は77校全校が実施、薬害被害者の声を聴く授業は77校中63校が実施してます。
取り上げた薬害も多岐にわたっています。
薬害肝炎問題だけではなく、サリドマイド、薬害エイズ、薬害スモン、MMRワクチン薬害、イレッサなどが取り上げられています。
国際医療福祉大学での薬害講義
毎年、全国の原告が全国の医学部・歯学部・薬学部等で講演しています。
2020年10月7日には、九州原告団(元全国原告団代表)の山口美智子さんが福岡県大川市にある国際医療福祉大学にて、『薬害』の講義をしました(山口さんは2022年まで講義を行い、2023年からは九州原告団代表の出田妙子さんが講義を行います)。
今春開設されたばかりの福岡薬学部薬学科の一年生約150人の学生の前で話しました。福岡薬学部では「リサーチマインドを持った臨床に強い医療人としての薬剤師」の育成を目標に掲げており、私の講義は、早期体験実習として薬害被害者の話を聴くとの位置付けでした。
山口さん曰く、「ちょうどその2日前(10月5日)、C型肝炎ウイルスの発見に対して2020年ノーベル医学生理学賞が贈られた話を冒頭に導入したこともあり、学生の皆さんは、「C型肝炎」に強い関心を持って、最後まで真剣に清聴していたように思います。」ということでした。
薬害肝炎との闘いを通して伝えたいこと
私の人生を変え、息子たちの心をも傷つけたのは、無神経に製造され、野放しに販売されてきたフィブリノゲンという薬だった。私がC型肝炎に感染したのは「運命」ではなく、避けることのできた「人災」だったのだ。
私は33年前にC型肝炎に感染してから、病気と闘い、治療と闘い、裁判を闘い、政治家たちへの要請行動を繰り返し行った。また、全国各地の街頭でビラ配りをしたり、マスコミを通して世論へ訴えたりと闘いの連続でした。
厚労省の中庭にある『誓いの碑』の写真を見て頂きたい。薬害が繰り返されてきている実態がある。
福岡、東京、大阪、名古屋、仙台という主に5地域の原告団から構成される薬害肝炎全国原告団は、薬害を二度と発生させないために、真に実効性のある医薬品等行政を監視評価する第三者組織創設を求めて活動してきた。
長い期間を経てやっと設置されることになり、この第三者組織の9人の委員の中に薬害被害者が2人加わったが、今後の薬事行政への意見が反映されなければならない。
山口美智子さんは、講義の最後に、以下の言葉で講義を締めくくりました。
「私は、この薬害肝炎との闘いの経験を語ることで、命の大切さや人間としての尊厳を伝えることができます。
「皆さんも今日は、薬害肝炎について薬害被害者の生の声を通して学ばれたことと思います。何事も『知る』ことから、『人の痛みを自分の痛みとして感じる』感性や想像力がみがかれていくことを期待します」
薬害の将来的な再発防止や被害拡大の阻止のためには、過去の薬害に学び社会で共有しておくことが不可欠です。
その意味で、薬害教育を地道に続けていくことが極めて大事になりますし、その思いで薬害肝炎全国原告団弁護団は活動を続けています。
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