薬害肝炎全国原告団会議をZoomで初開催、厚労大臣協議をふまえ病院調査の課題などを再確認
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薬害肝炎全国原告団弁護団会議をウエブ会議で初開催
令和2年8月18日に開催した厚生労働大臣との定期協議をうけて、薬害肝炎全国原告団会議が2020年9月12日、東京で開催され、50名近い原告・弁護士が参加しました。
今年は新型コロナウイルスの広がりを受けて、初めてウエブ会議(Zoom)も並行的に利用しました。
各地の原告団会議や全国班会議などは既にZOOMを活用していましたが、全国原告団会議(全国代議員総会)としては初めての利用となります(アイキャッチ画像は例年の会議の様子)。
配布資料については事前にPDFで配信してペーパレス化を図りました。その上で当日は、担当弁護士がZoomで画面共有も適宜行いながら会議しました。ご自宅から参加した全国の原告さんも思ったよりもスムーズに対応してくれました。
いつもは事前代議員会議1時間、本会議3時間半と5時間近い会議になります。今回はウエブ会議ということで、2時間という短い時間で集中的に開催しましたが、かえって集中できた面もあったようです。
先日行われたばかりの大臣協議の報告を受け成果を振り返りつつ、来年に向けた課題を確認していきました。
ここでは「被害救済」についてご紹介しましょう。
被害救済~病院調査の現状
各地弁護団報告によると、薬害肝炎全国弁護団(東京・大阪・東北・名古屋・九州の5支部およびその関連地域)による提訴原告数は2229名、和解数は2164名(約97パーセント)に達しました。
薬害肝炎全国弁護団は、いわゆるカルテがないケースについても2002年の提訴時点から積極的に提訴してきており、提訴のうち10%以上はカルテがなく、医療従事者の記憶によって立証するケースです。
カルテがない原告286名のうち256名が医師尋問等を経て、すでに和解成立しています。
今年の大臣協議においては、「被害救済」については2つのテーマを取り上げました(写真は2019年大臣協議)。
まず「病院調査について、2022年1月までに投与被害者への告知を終了するための対応・スケジュール」を問いました。
次に、「劇症肝炎について、法改正以外の解決方法」について問いました。
病院調査については、厚労大臣が、現状では公約を果たすことが難しいこと、国の支援策がうまくいっていないことの現状を確認した上、今後も病院調査について協議していく旨を言明しました。
大臣協議後には、弁護団原告団が記者会見を行い、20名を超えるマスコミが参加して熱心に取材してくれました。
当日のNHKニュースでは以下のように報道されています。
C型肝炎 汚染血液製剤投与の可能性ある1万人以上と連絡取れず
かつてC型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤を投与された可能性がありながら、連絡を取れずにいる人が、少なくとも1万人に上っていることが分かりました。
かつて、出産や手術などで血液製剤を投与されてC型肝炎ウイルスの感染が広がった問題では、患者や遺族が裁判を起こせば、法律に基づいて国が和解したうえで、1人当たり最大で4000万円の給付金が支給されます。
厚生労働省によりますと、ことし6月末までに全国の1249の病院で診療記録などを調査し、およそ1万3000人にウイルスに汚染された血液製剤が投与された可能性があることを伝えました。しかし、投与された可能性がある人のうち、少なくともおよそ1万人と連絡が取れていないということです。
また、27の病院で確認作業が終わっておらず、16の病院では、まだ確認作業に取りかかれていないということです。18日は、弁護団と厚生労働省との、年に1度の協議が行われ、弁護団によりますと、加藤厚生労働大臣は、令和4年1月までに確認作業を終えたいという意向を示したということです。
C型肝炎ウイルスは、気付かないうちに肝硬変や肝臓がんに進行するおそれがあり、弁護団の高井章光弁護士は「医療機関が新型コロナウイルスの対応に追われる中で、本当に調査が終わるのか疑問だが、何とか調査を終えてほしい」と述べました(2020年8月18日NHK)
その後、西日本新聞朝刊でも報道されました。
C型肝炎疑い、4割未告知 追跡調査の人手不足 救済期限切れも
汚染された血液製剤を投与されC型肝炎に感染した疑いのある2万3339人の4割が、投与の事実を告知されないままだ。症状がゆっくり進行するため感染に気付いていない人も多いとされ、早期発見が求められるが、調査する病院の人手不足で作業が進んでいない現状がある。新型コロナウイルスへの対応で今後も停滞が予想され、法律が定める救済期限に間に合わない恐れがある。
2008年に成立した薬害肝炎救済法は、1994年以前に手術や出産の止血のために血液製剤フィブリノゲンなどを投与され、C型肝炎に感染した人の救済が目的。給付金を受けるには患者が提訴し国と和解する手続きが必要で、当時のカルテなどで投与事実を証明する必要がある。
厚生労働省によると、フィブリノゲンが納入された医療機関のカルテから判明したC型肝炎の感染疑いがある人のうち、未告知者は9574人(20年6月時点)。約半数がカルテ上の居住地から転居し、連絡が取れなくなっている。同省は住民票調査などを行うよう求めているが、病院側にはこうした調査が容易ではなく、人手不足もあって停滞しているという。
救済法の期限は23年1月。提訴までの期間を踏まえ、国は22年1月までに投与された人を特定し、告知を終えることを目標にする。ただ、カルテ調査に着手していない病院は16施設、確認作業中も27施設ある。大病院が多く、未告知者が大幅に増える可能性が高い。
薬害によるC型肝炎感染者は推計1万人とされるが、国と和解したのは7月末時点で2417人にとどまる。薬害肝炎全国弁護団の高井章光弁護士は「病院任せにしていてはとても救済期限に間に合わない。命に関わる問題で、早期発見、早期治療につなげる必要があり、国が関与して作業を進めるなど抜本的な対策が必要だ」と訴える。
加藤勝信厚労相は18日の原告団との協議で「期限は限られているが、コロナで各病院はてんてこまい。そういうことも踏まえてどうするか考えていかないといけない」と述べた(2020年8月25日西日本新聞)
以上のように被害救済については、病院調査を終えて薬害肝炎救済法の期限内に救済を終えることが重要な課題になってきます。
この日、全国原告団会議に続いて行われた薬害肝炎全国弁gの段会議では、病院調査をさらに働きかけていくこと、そして劇症肝炎の救済を勝ち取ることについて改めて確認しました。
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・「薬害肝炎全国原弁会議を開催、劇症肝炎被害者らの訴えを確認」(2019年5月27日)
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