改正薬機法による第三者評価・監視組織の設置が実現へ
目次
◆ついに成立した薬機法2019年改正
前回の薬事法改正から5年が経過し、政府は2019年3月19日、薬機法等の一部を改正する法律を閣議決定して、同日、国会に提出していました。
国会提出から8か月後の2019年11月27日、薬機法改正案は、参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。
薬害に関していえば、サリドマイド事件をふまえた1979年改正、薬害エイズ事件をふまえた1996年改正に続く、大きな改正になりました。つまり、薬害肝炎事件の検証会議が最終提言にて提唱していた第三者評価・監視組織の設置がようやく法定されたものになります。
◆改正法の内容
具体的な改正法は、厚生労働省に医薬品等行政評価・監視委員会(「第三者評価・監視委員会」)を設置するもの。
第三者評価・監視委員会は、医薬品、医療機器等の安全性の確保並びにその使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止に関する施策の実施状況の評価・監視を行います。そして、評価又は監視の結果に基づき、必要に応じ厚生労働大臣に意見又は勧告を行います。
さらに評価・監視委員会は、意見又は勧告を行ったときは、その内容を遅滞なく公表しなければならないとされています。これに対して、厚生労働大臣は、意見又は勧告に基づき講じた施策について評価・監視委員会に報告することとされています。
なお、評価・監視委員会は、所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは関係行政機関の長に対し、情報の収集、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることもできます。
この評価・監視委員会は、委員10人以内で組織し、特別の事項を調査審議させる臨時委員、専門の事項を調査させる専門委員を置くことができるとされ、評価・監視委員会の委員は、独立してその職権を行い、任期は2年とされています。
今後いかに「独立性」を保ちつつ、「専門的」かつ「機動的」に活動を行えるか、その前提として薬害被害者の委員人選を含めて2020年は注視が必要になります。
改正薬機法による第三者評価・監視組織の設置について
薬害肝炎全国原告団 代表 浅 倉 美津子
薬害肝炎全国弁護団 代表 鈴 木 利 廣「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が、薬害肝炎事件の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実態について検証を行い、再発防止のための医薬品行政の見直し等のために「最終提言」を平成22年4月28日に取りまとめました。
「最終提言」は、薬害の発生及び拡大を未然に防止するため、医薬品行政機関とその活動に対して監視及び評価を行う第三者監視・評価組織の創設を提言していましたが、「最終提言」から9年6か月余りを経て、昨日、上記第三者監視・評価組織を実現するものとして「医薬品等行政評価・監視委員会」の設置を内容とする改正薬機法が成立しました。
このあたらしい「医薬品等行政評価・監視委員会」が、国民の命をしっかりと守ることのできる医薬品行政実現への一助となることを、私たちは、心から期待しています。もっとも、「医薬品等行政評価・監視委員会」が真に薬害の未然防止のための監視・評価活動を効果的かつ公正に行うためには、医薬品規制行政機関や医薬品企業などの利害関係者から「独立性」を保つとともに、医薬品の安全性を独自に評価できるだけの「専門性」を具える必要があり、また、薬害が発生する疑いのある段階で、又は発生後に、薬害の発生又は拡大を最小限に食い止めるために、迅速かつ適切な対応及び意思決定をなしうるに十分な「機動性」を発揮できる組織及び運営形態を持っていなければなりません。
そのためには、「医薬品等行政評価・監視委員会」の委員に薬害被害者が複数名選任されるなど評価・監視活動を行うために委員の人選が適切になされること、委員会において十分な情報提供を受け、必要とあれば外部機関に情報の調査分析を依頼するなどして迅速かつ適切な対応及び意思決定をできるようにすることなどが必要となります。
私たちは、かかる観点からこれからも委員会の活動等を注視していく所存です。また、今般の改正薬機法では、条件付き早期承認制度が法制化されるなど、医薬品・医療機器の承認についての規制緩和も制度化されました。私たちは、この制度によって新たな薬害を生じることになるのではないかと危惧しています。条件付き早期承認制度が、拙速な対応によって新たな薬害を生じることのないよう極めて慎重・厳格に運用されることを切望します。
以 上