映像で学ぶ薬害シリーズ「MMRワクチン事件」が完成
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映像で学ぶ薬害シリーズ「MMRワクチン事件」が完成
映像で学ぶ薬害シリーズ「MMRワクチン事件」が2019年3月、完成しました。
医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団から贈呈頂きましたのでご紹介します。
平成22年に薬害肝炎事件検証委員会がまとめた薬害再発防止に向けた「最終提言」が公表されました。その中では薬害教育の重要性が指摘されています。
医師、薬剤師、歯科医師、看護師となった後、薬害事件や健康被害の防止のために、薬害事件の歴史や健康被害、救済制度及び医薬品の適正使用に関する生涯学習を行う必要がある・・
薬害事件や健康被害の防止のためには、専門教育としてだけではなく、初等中等教育において薬害を学ぶことで、医薬品との関わり方を教育する方策を検討する必要があるほか、消費者教育の観点から、生涯学習として薬害を学ぶことについても検討する必要がある・・
・・また、例えば、学校薬剤師等による薬物乱用対策等の教育活動等も参考にしつつ、各種メディアの活用なども含めた、医薬品教育への取組を行うこと等を関係省で連携して検討すべきである(最終提言46頁)
医療・医薬品のすべての関係者は、各々の薬害の実態を学び、記憶にとどめることで、薬害発生の防止につなげていくことが求められています。
「映像で学ぶ薬害シリーズ」はこのような趣旨にて作成されているものになります。
映像で学ぶ薬害シリーズ「薬害の知識と教訓」としては、MMRワクチン以外にも、クロロキン、スモン、イレッサ、ヤコブなどが取り上げられています。
また薬害教育DVDシリーズとして、「温故知新~薬害から学ぶ~」も別に発刊されており、サリドマイド、薬害エイズ事件、薬害肝炎事件、陣痛促進剤による被害などが取り上げられています。
MMRワクチンとその問題点
MMRワクチンは183万1076人(法定接種総数)に接種され、うち1754人に無菌性髄膜炎の被害を発生させました。
そして1042人が予防接種健康被害救済制度において被害認定を受けています(厚労省健康局調べ)。2018年5月時点において、同制度の被害認定総数は3254人ですが、MMR被害が実に全体の3分の1を占めており一番多くなっています。
MMRワクチンとは、麻疹、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチンです。
毒性を弱めた病原体から作る生ワクチンになります。長期間免疫が持続する反面、不活化ワクチンよりも副反応が多いと言われています。
1970年代初めから欧米で使用されていましたが、日本では1988年6月、厚生省予防接種委員会が「早急に現行の麻疹定期接種時にMMRワクチンを接種できるよう積極的に進めていくべき」という意見をまとめました。
こうして1988年12月19日、予防接種実施規則が改訂され、麻疹ワクチンの定期接種時に、希望者に対してMMRワクチンを使用できるようになったのです。そして1989年4月1日からMMRワクチン接種が開始しました。
従来おたふくかぜワクチンは任意予防接種でしたが、定期予防接種と同じ扱いになってしまったのです。
被害者の母は薬害根絶フォーラム(2001年)で次のように述べていました。
「やはり自分が病院に連れて行かなかったからだという思いがあったので、自分のせいだという、本当に誰のせいでもなくて自分が悪かったんだという思いでいたものですから」
MMRワクチンは1989年4月1日以降、無菌性髄膜炎など副反応と思われるケースが次々と報告されるようになりました。
予防接種委員会は1989年9月、MMRワクチン由来の無菌性髄膜炎症例は6例と認定。これをベースに副反応は10万人から20万人に1人として、接種を推進する立場を維持しました。
独自に被害実態を調査した前橋市医師会の調査では217人に1人の割合で発症していましたが、厚労省はこの調査結果を公表しなかったのです。
MMRワクチンは1993年4月の接種中止まで継続され、多数の被害者を生み続けました。
以上のMMRワクチンを巡る問題については、市販後の副反応を迅速に把握・分析するシステムが欠落していた、とも指摘されています。
映像で学ぶ薬害シリーズではその背景やワクチンの問題点についてもわかりやすく解説されています。
MMRワクチン訴訟の提起
MMRワクチン接種によって死亡した2児の家族が1993年12月、大阪地方裁判所に提訴して、国と阪大微生物研究会を被告する訴訟が開始しました(その後、1996年4月、被害者家族3人が二次提訴)。
原告らは、「薬事法違反の欠陥ワクチンを製造した企業と承認した国に法的責任があるとし、1989年の被害発生ときには接種を中止すべきであった」と主張しました。
これに対して、被告国は、「MMRワクチン接種は義務ではなく任意だ」、「自然感染した場合より接種の方が有用性が高いと判断した」などと反論。
2003年3月の大阪地裁判決は、原告らの主張を認めて製造法の変更について指導を怠ったとして国の責任を認めて賠償を命じました。
これに対して2006年4月の大阪高裁判決は、被告阪大微生物研究会が一審判決後に賠償金を支払ったことにより国の請求を棄却し、最高裁も国に対する上告について受理せず一連の訴訟は終結しました(詳細は、「知っておきたい薬害の教訓」(薬事日報社・97頁以下など)。
国は現在も国に対する法的責任を否定しており遺族や家族に対して謝罪もしていません。
MMRワクチンは重大な被害を接種した子・家族らに残しました。そして今なおワクチンをめぐる問題について様々な視点、教訓を提供してくれている事件といえるでしょう。
このほど、薬害教育映像シリーズ「MMRワクチン事件」が完成いたしました。
近頃、麻疹や風疹等の感染拡大がニュースになっています。これらの感染症予防には、ワクチン接種が効果的であるといわれています。しかし、そのワクチンも適格に製造され、適正に使用されないと薬害を引き起こすことがあります。
このような過去の薬害事件を知り、医療関係者として大きな教訓を学ぶことのできる作品を目指しました。また本作品は、文部科学省教育映像等審査により「選定」の評価を受けております