繰り返し発生する類似医療事故、日本医療機能評価機構が2017年の再発事例を公表
目次
◆2014年から2016年に提供した医療安全情報
医療事故・ヒヤリハット事例は類似ケースが繰り返されています。
日本医療機能評価機構は2006年12月から医療安全情報を提供しています。
2014年から2016年に提供した医療安全情報に類似した事例が、2017年にも繰り返し発生しています。
◆与薬時の患者取り違え
6件と最も多かったのが、「与薬時の患者取り違え」です。
看護師が、別の看護師から患者Xの経腸栄養剤と抗けいれん薬の投与を依頼されました。
依頼を受けた看護師は、リストバンドやベッドネームで氏名を確認しないまま患者Yを患者Xと思い込んでしまい、患者Yに経腸栄養剤と抗けいれん薬を投与したというケースです。
依頼していた別の看護師が患者Yの病室に行った際、患者Xの氏名が書かれた栄養剤のボトルが接続されていることに気付いたものです。
与薬時に、薬包などの氏名とネームバンドを照合したり、患者に氏名を名乗ってもらい薬包などの氏名と照合すれば避けられる事案です(医療安全情報116号)。
◆誤った患者への輸血
次いで3件と多かったのが、「誤った患者への輸血」です。
医師は、患者X(B型)に対して濃厚血小板輸血の説明を、患者Y(AB型)に対して濃厚血小板の輸血を行う予定でした。
その医師は、患者Xの輸血同意書と患者Yの濃厚血小板を一緒に持って、患者Xの病室を訪室します。
ところが、患者Xに対して輸血の説明をして同意書にサインをもらった後、持参していた「患者Yの濃厚血小板」を患者Xに対するものと思い込んでしまい、患者氏名や血液型の確認を行わないままに、患者Xに投与を開始してしまったのです。
開始後に認証システムで実施入力をしたところ、エラーが出たため異型輸血をしたことに気づき、投与を中止しました。
ちなみに集計期間を広げると(2007年7月から2015年11月)、実に17件もの類似事例が報告されています(医療安全情報110号)。
◆中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症
同じく3件と多かった類型に「中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症」があります。
医師は、患者の頭側を30度ほど挙上した状態で、左内頚静脈に留置していた中心静脈カテーテル(トリプルルーメン)を抜去しました。
抜去部を5分間圧迫後、通気性のあるドレッシング材を貼付し、折りたたんだガーゼで圧迫するようにテープで固定しました。
ところがその後、患者は息苦しさを訴え、徐々にSpO2値、意識レベルが低下したたため、きゅうきょ心エコーを実施したところ、空気の混入を認めたという事案です。
複数の医師が、座位で抜去することの危険性を知らないまま実施していたことが多数報告されています(医療安全情報113号)。
◆薬剤の投与経路間違い
「薬剤の投与経路間違い」も多い事例です。
患者は、右前胸部にCVポート、左前腕に末梢静脈ルートを留置していました。
CVポートから投与するフルカリック3号輸液を調製する際、看護師らは混注する薬剤の内容と量は確認しましたが、投与経路
を確認しなかったいうものです。
そして看護師は、注射指示書の投与経路の指示を確認しないまま、フルカリック3号輸液を末梢静脈ルートに接続したため、8時間後、患者が左前腕の痛みを訴えて、発赤・腫脹・熱感も認めたという事案です。
◆その他の再発事例
その他にも、「シリンジポンプの取り違え」、「はさみによるカテーテル・チューブの誤った切断」、「胸腔ドレーン挿入時の左右の取り違え」、「腫瘍用薬処方時の体重間違い」、「小児の薬剤の調製間違い」、「外観の類似した薬剤の取り違え」、「他施設からの食種情報の確認不足」、「経鼻栄養チューブの誤挿入」などが再発しています。