医療事故調査制度の医療事故報告件数は停滞、2年4か月で888件と当初予想を大きく下回る
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◆ 医療事故調査制度の現状
日本医療安全調査機構が2018年2月9日、医療事故調査制度の同年1月末までの現状について、報告しました。
医療事故調査制度とは、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち「管理者が予期しなかったもの」すべてについて、日本医療安全調査機構に報告した上、再発防止策を含めて検討するものです。
報告によると医療事故調査制度が運用開始した2015年10月以来、888件の医療事故が報告され、うち578件(65・1%)について院内調査が終了しています。
続いて平成30年1月の新規報告件数としては31件でした。
新規報告の件数としてはほぼ横ばいの数字になっています(12月は33件、11月は32件、10月は41件、9月は35件)。
また診療科別の内訳としては、外科が6件、内科が5件、消化器科が3件、産婦人科が3件、脳神経外科が3件、呼吸器内科が3件になっています。
◆ 医療事故調査制度の評価と課題
それでは医療事故の報告件数はどのように推移しているのでしょうか。
日本医療安全調査機構の発表によると、2015年10月の開始から半年で188件の医療事故報告がなされました。
その後、2016年9月までの1年間では累計388件の報告数に達しました。
当初厚労省が予測していた件数は、年間「1300件から2000件」でしたので予測の3分の1以下にとどまったことになります。
その後、2015年10月から2017年9月まで2年間の累計も751件にとどまりました。つまり2年目の累計は363件であり、1年目の件数をさらに下回ったことになります。
私が医療事故相談を受けるケースについても、いわゆる予期せぬ死亡事案と思われるにもかかわらず、医療事故報告がなされておらず何ら調査を行っていないものが複数見受けられます。
当初の制度設計では対象とすべきだったケースが漏れ落ちているのは明らかでしょう。
もう一つ問題と思われるのは医療事故報告がされたケースにおいても、院内調査結果が出るまでに時間がかかりすぎている点です。
「医療事故調査・支援センター事業報告(平成28年年報)」によりますと、報告から調査結果まで「5~6か月未満」が一番多く、中央値は139日となっています。
9か月から12か月未満経過しているにもかかわらず未報告のケースが「28件」あります(九州7件、近畿3件、東海北陸4件、関東信越14件)。
さらに12か月以上経過しているのもかかわらず未報告のケースが「8件」あり、内訳としては九州3件・関東信越5件になっています。
医療事故報告から院内調査結果報告までの期間については、地域一区切りでは実情が分かりません。やはり県によってかなり差があるようですから、県毎の件数についても情報公開していくことによって県毎の問題点があるのかないのかについても検討していく必要があるでしょう。
医療事故報告がされてもなかなか結果が出ないことによっても遺族はかなり心労を感じることになります。
予期せず死亡ケースについてもれなく医療事故として報告すること、速やかに院内調査を終えることなどまだまだ改善の余地があるようです。