生後2ケ月の女児が心臓手術後に低酸素脳症による重度後遺障害で寝たきりに、30代の男性医師が気管チューブを食道に誤挿管する医療ミス
大阪市立総合医療センターで2017年9月19日、生後2か月の女児に対して先天性心疾患の心臓手術を行った後、医師が気管に入れるべきチューブを誤って食道に入れてしまい、女児が30分間、心肺停止する医療事故が発生していました。
同年9月22日、医師がいったんチューブを抜去しましたが、呼吸状態が悪化したためまだ時期尚早と判断。そこで、医師が改めてチューブを口から差し込んだ際、誤って食道に入れてしまったというものです。
医師がただちに誤挿管に気付かなかったため、女児は約30分間にわたって心肺停止状態に。医師が人工心肺装置を付けるために胸を切開した際に誤挿入が発覚しました。女児の心拍は再開したものの、低酸素脳症に陥って後遺障害を後遺したというものです。
挿管後に患者の胸郭が上がっていることを確認し、呼吸音について検診するほか、他の医療従事者が確認するなどチームとして確認していれば、容易に回避できた重大な医療事故(医療過誤)といえます。
医師は30代ということですから、経験不足からきた重篤な過失があったといえるでしょう。当然ですが、医療機関も両親に謝罪の上、示談の方針を示しています。
日本医療機能評価機構がヒヤリハット事例を集積して報告している中にも、全く同じケースではありませんが同様のチューブに関する事故は多数報告され、繰り返し注意喚起されているところです。
例えば、気管を切開し、チューブを留置する経気管切開孔挿管は、経口挿管や経鼻挿管により開始した呼吸管理が長期必要な患者に対して、気道粘膜に与える刺激や唾液の流れ込みによる誤嚥性肺炎を軽減する目的で行われます。
この経気管切開孔挿管による管理中の患者の気管切開チューブが皮下や縦隔に迷入したという事例は、2004年10月から2014年3月までの間において18件報告されています。
そのほか胃管は、消化管の減圧、手術中の管理、経口摂取できない場合の栄養管理のため、鼻または口から食道を経由して胃や腸まで挿入します。胃管の挿入は、多くの医療機関でにおいて日常的に行われていますが、逆に、食道と平行する気道に誤挿入される可能性があります。
2010年から2015年9月までの集計でも56件報告されています。うち8件(14・3%)は、死亡ないし傷害残存の可能性ありとなっています。
医師がしばらく誤りに気付かなかったため、十分な酸素が行き届かず、女児は約30分間、心臓が停止。人工心肺装置を付け、心拍は再開したものの、低酸素脳症に陥って脳に障害を負った。現在も意識が戻っていない。集中治療室から出られず、退院のめどは立っていない。
女児の母親は取材に応じ「娘の容体がおかしくなった時にすぐにチューブを抜いていれば、ここまでひどくはならなかったのではないか。事故で娘の人生は一変してしまった」と話している。
センター側は慰謝料などの補償を検討している。大阪市は「重大な事故だと認識している。今後、再発防止へ安全管理の徹底が必要だ」としている(2018年2月14日読売新聞)
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