古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

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腸閉塞の緊急手術中に全身麻酔の挿管により嘔吐して死亡、富士市立中央病院が1億2000万円で裁判上の和解

腸閉塞の緊急手術中に死亡した事案で和解が成立

 腸閉塞の緊急手術のため受けた全身麻酔によって呼吸不全にて40代の男性患者が死亡したケースで、医療機関側が約1億2000万円を支払う和解に応じました。

 患者は9月4日未明、腹部の不快感や腹痛を訴え静岡市救急センターを受診した後、静岡市立中央病院に転院して治療を受けていました。
 同病院が保存的治療を選択しましたが、患者には腹痛や嘔吐が継続しました。
 9月5日午後になり、同病院はようやく緊急手術を行いましたが、全身麻酔をかけて挿管しようとしたところ、大量の嘔吐・誤嚥を起こし、同日20時すぎに循環不全・呼吸不全で死亡したものです。

 原告(患者遺族)は、静岡地方裁判所沼津支部に損害賠償請求訴訟を提起し、緊急手術が必要な絞扼性イレウスの疑いがあったにもかかわらず、早期発見のための検査を実施せず、適切な治療が行われなかったと主張していました。

 ちなみに同病院の医療事故調査委員会は2014年、「医療ミスとはいえない」と結論づけていましたが、提訴後、裁判所の和解案を受け入れたものです。

訴状などによると、男性は14年9月4日未明に腹部の不快感を訴え、市救急センターを受診。市立中央病院に移り治療を受けたが、腹痛や嘔吐が治まらず、同日午後10時五51分に腸閉塞による循環不全・呼吸不全で死亡した。

遺族側は、緊急手術が必要な絞扼性腸閉塞の疑いがあったにもかかわらず、診断が遅れ、適切な治療が行われなかったため死亡したなどと主張していた。病院内の医療事故調査委員会は当初、医療過誤とは判断せず、公表を見送っていた。合意について、遺族側の代理人は「主張がほぼ認められた」と話している。

院長は「医療過誤が起きたことについて、その責任を痛感し、亡くなられた患者および遺族に深くおわび申し上げる。今後はより良い医療の提供と、信頼される病院づくりに努める」とのコメントを発表した(2月9日付け中日新聞)

急性腹症とは

 急性腹症とは、「急激には発症して腹痛を主訴とする疾患の総称」をいいます。

 その中で腸閉塞(イレウス)は腸内容物の肛門側への搬送が機械的または機能的原因によって障害された病態をいいます。
 そして絞扼性(こうやくせい)イレウスの場合には腸管の血行障害が加わるため、腸管は粘膜側から壊死に陥り、漿膜側まで壊死が達すると非可逆的な状態になります。さらに穿孔等が起これば急性腹膜炎の症状が出現し、重篤な状態となるわけです。

 急性腹症の中には絞扼性イレウスのように死に達する場合もありますから、適切な検査・診断が求められるわけです。

担当した急性腹症による患者死亡ケースの裁判例

 急性腹症患者に対する適切な検査・診断・治療を怠ったとして紛争になるケースは少なくなく、訴訟も一定数あります。
 私が原告(遺族)代理人弁護士として担当した訴訟(福岡地方裁判所)は、夕食でヒラスを食べた2時間後に激しい腹痛が持続するため、救急車で医療機関を受診したにもかかわらず数日間、保存的治療を継続したため死亡したというケースでした(ケース「内視鏡 絞扼性イレウス見落としの過失による死亡」)

 主治医の尋問、裁判所の鑑定を経て、福岡地方裁判所が有責の和解所見を出し、医療機関が和解を受け入れた結果、金3500万円にて和解が成立しています。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。